ほっと・ケアライフ通信
第33回 「認知症高齢者等による事故等の実態把握等に関するワーキンググループ」について
今回のほっと・ケアライフ通信では、平成28年12月に行われた「認知症高齢者等による事故等の実態把握等に関するワーキンググループ」についてお伝えいたします。
このワーキンググループは、厚生労働省・法務省・金融庁・国土交通省・警察庁が認知症の方による事件、事故に関する実態調査、有識者からのヒアリング等を踏まえ、社会としてどのように備えていくかについて関係省庁で検討していくものです。
平成19年の12月に起きた、徘徊する認知症高齢者が列車と衝突した事件で、鉄道会社がその遺族に対して損害賠償を請求して起こった裁判がきっかけでこのワーキンググループは発足されました。
- 各省庁における実態把握
- 課題
① 事故等の未然防止・早期対応の必要性
- 認知症の方が重大な事故を発生させないようにするための地域の見守り体制づくり
- 地域で認知症の方と関わることが多いことが想定される事業者(小売業、金融機関、公共交通機関等)が気づき、早期に必要な対応ができるよう、認知症に関する理解を深める取組が必要。
- また、鉄道事故等の未然防止に向けて設備・ハード面での対応が必要。
- 新たな制度的対応に係る検討や民間保険の活用。
- 今後の施策等
(1) 事故等の未然防止・早期対応
① 地域における見守りの体制整備の推進
○ 徘徊・見守り体制を整備する事業(徘徊・見守りネットワーク事業、GPS等徘徊探知システムの事業など)をさらに推進するため、都道府県が未実施市町村の支援や広域での見守り体制整備を進める事業を新たに開始【厚生労働省】
○ 認知症サポーターが地域の見守り体制で活躍している事例などを広め、より効果的に活動できる仕組み作りを進める。【厚生労働省】
○ 認知症の方と地域で関わることが多いことが想定される小売業・金融機関・公共交通機関の職員に認知症の理解を深めてもらうため、認知症サポーターについて、周知し、受講を勧めることにより、認知症に気づき、関係機関への速やかな連絡等、連携できる体制整備を進める。【厚生労働省・金融庁・農林水産省・経済産業省・国土交通省】
○ 運転免許センター内に医療系専門職員を配置して運転適性相談に当たらせることにより、専門的な見地から病状を早期に発見し、認知症の方による交通事故の未然防止を図る取組を推進する。【警察庁】 ③ 鉄道事故等の未然防止に向けた設備・ハード面への対応
○ 踏切道に取り残された認知症高齢者等の歩行者を救済するため、検知能力の高い障害物検知装置や非常押しボタンの設置を推進する。【国土交通省】
(2)起こりうる損害への備え・事故等が起こった場合の損害への対応
① 新たな制度的な対応について
○ 責任能力がなく、また監督責任者がない場合の被害者救済のあり方については、認知症の方に限らず、責任能力と賠償責任に関する法制上の課題等も含めた議論が必要。また、責任能力に関わりなく幅広く損害をカバーする仕組みについては、認知症の方などが社会生活を営む上で、生活のあらゆる場面が想定される中で、その範囲をどう考えるか、財源、モラルハザードへの対応も含め幅広い議論が必要であり、直ちに新たな制度的な対応を行うことは難しいと考えられる。
○ 加えて、各省庁における実態把握の取組の結果において、認知症に起因する事故・トラブル等は、一定件数発生しているが、その内容や損害などは多様であるとともに、今回の最高裁判決の事案のように損害額が高額となる事案が、頻繁かつ多発しているという事実は確認されなかった。また、②にあるように民間保険も開発が進められている。
○ このため、まずは、上記(1)、(2)②の施策等を進め、今後の実態を注視しながら必要に応じ、関係省庁連絡会議において検討する。
○ 鉄道事故に関し、特定の鉄道会社などを対象に、人身事故による電車の運休や遅延に伴う費用や、復旧のための人件費などをカバーするオーダーメイド的な保険も検討されている。
○ また、個人として法的な賠償責任を補償するための保険も様々な商品が開発されている。
○ このため、まずはこうした民間保険について、今後の実態を注視するとともに、特に個人の賠償責任を補償する保険について、市町村や「認知症の人と家族の会」等の関係団体と連携しながら、必要に応じて紹介・普及等を行う。
以上が成28年12月に行われた「認知症高齢者等による事故等の実態把握等に関するワーキンググループ」についてのまとめになります。
ご拝読有難うございました。