ほっと・ケアライフ通信
第32回 「平成29年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」について
今回のほっと・ケアライフ通信では、平成28年12月9日に社会保障審議会介護給付費分科会が発表した「平成29年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」についてお伝えいたします。
今回の審議報告では、(1)介護人材の処遇改善の報告がありました。
平成28年8月に閣議決定された「未来への投資を実現する経済対策」において、『介護保険制度の下で、介護人材の処遇については、キャリアップの仕組みを構築し、月額平均1万円相当の改善を平成29年度から実施する』ことが決められました。
今回の審議報告では、この新たに追加される処遇改善の区分の具体的内容としては、現行の介護職員処遇改改善加算(Ⅰ)に「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること(就業規則等の明確な書面で整備・周知すること)」を追加した要件を満たすこととしています。
つまり、介護職員処遇改改善加算で一番ハードルが高い、介護職員処遇改改善加算(Ⅰ)の要件を満たすことができる事業所でないと、新規に追加されるキャリアアップに関する要件を満たしても、新しい介護職員処遇改改善加算の恩恵はできることができないとしています。
介護職員処遇改改善加算(Ⅰ)の取得は介護事業所全体の75%以上になっており、これから、介護職員処遇改改善加算(Ⅰ)が取得できない事業所は、取得できている事業所に比べ処遇改善の差が明確に出始め、介護職員処遇改改善加算(Ⅰ)の取得は、事業所が生き残っていくうえで重要なものになることが予想されます。
※介護職員処遇改改善加算(Ⅰ)の要件(平成27年度)
次に掲げる基準( ①~⑧ )のいずれにも適合すること。
① 介護職員の賃金(退職手当を除く。)の改善(以下「賃金改善」という。)に要する費用の見 込額が介護職員処遇改善加算の算定見込額を上回る賃金改善に関する計画を策定し、当該計画に 基づき適切な措置を講じていること。
② 指定事業所において、①の賃金改善に関する計画、当該計画に係る実施期間及び実施方法その 他の介護職員の処遇改善の計画等を記載した介護職員処遇改善計画書を作成し、全ての介護職員 に周知し、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第 一項の指定都市(以下「指定都市」という。)及び同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市 (以下「中核市」という。)にあっては、指定都市又は中核市の市長。第三十五号及び第六十五 号を除き、以下同じ。)に届け出ていること。
③ 介護職員処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を実施すること。
④ 当該指定事業所において、事業年度ごとに介護職員の処遇改善に関する実績を都道府県知事に 報告すること。
⑤ 算定日が属する月の前十二月間において、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、労働 者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号) その他の労働に関する法令に違反し、罰金以上の刑に処せられていないこと。
⑥ 当該指定事業所において、労働保険料(労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四 年法律第八十四号)第十条第二項に規定する労働保険料をいう。以下同じ。)の納付が適正に行 われていること。(①~⑥は、次頁加算Ⅱ~Ⅳ共通)
⑦ 次に掲げる基準のいずれにも適合すること。(キャリアパス要件)(一) 介護職員の任用の際における職責又は職務内容等の要件(介護職員の賃金に関するも のを含む。)を定めていること。(二)(一)の要件について書面をもって作成し、全ての介護職員に周知していること。(三) 介護職員の資質の向上の支援に関する計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は 研修の機会を確保していること。(四)(三)について、全ての介護職員に周知していること。
⑧ 平成二十七年四月から②の(計画書の)届出の日の属する月の前月までに実施した介護職員の 処遇改善の内容(賃金改善に関するものを除く。)及び当該介護職員の処遇改善に要した費用を 全ての職員に周知していること。(新たな定量的要件)