ほっと・ケアライフ通信
第21回 介護報酬でのサービスの質の評価の導入について②
今回のほっと・ケアライフ通信は、前回に引き続き平成27年6月25日に行われた第123回「社保審一介護給付費分科会」で議論された「介護報酬でのサービスの質の評価の導入に関する取組」についての資料について、ご紹介させていただきます。
4.インターライ方式
「インターライ方式」は介護先進国であるオランダやデンマークを含め32か国で利用さえているケアマネージャーによる利用者の評価方法になります。
「インターライ方式」とはもともとは上述した「MDS方式」の内容を刷新したものになります。「MDS方式」はもともと多職種による利用を前提に開発されており、地域包括ケアシステムが目指す「切れ目のないケア」を提供することに適した評価方法になります。
「インターライ方式」は「MDS方式」と「居宅サービス計画ガイドライン方式」に比べ評価項目が多くなり更に利用者の評価の精度を上げるため、介護サービスのアウトカム評価にも有用だと考えられています。
(1)基本情報の追加項目 ※以下の表は第123回「社保審一介護給付費分科会」資料より抜粋
①「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目
「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの基本情報への主な追加項目は、「アセスメントの理由」、「本人のケア目標」、「退院後の経過期間」になります。「アセスメントの理由」、「本人のケア目標」はアウトカム(結果)の基準をはっきりさせるため、「退院後の経過期間」はアウトカムがどう持続しているかを把握するためのものであり、ともにアウトカム評価を意識して追加された項目だと考えられます。
②「MDS方式」からの主な追加項目
「インターライ方式」は「MDS方式」をバージョンアップしたもので大きな変更点は1つしかありません。「要介護度」の記載です。このことから「要介護」の変化もアウトカム評価の重要な基準の一つになることが考えられます。
(2) 相談受付表の追加項目
①「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目
「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目は、「入所前の同居形態」「教育歴」「医療機関受診時の送迎」「受診時の付き添いの必要性」になります。「入所前の同居形態」は、今後の施設の必要な数などを推計するのに役に立つ情報だと思います。「教育歴」つまり「学歴」と介護方法との関連性はあるのかは、いささか疑問が残ります。「医療機関受診時の送迎」「受診時の付き添いの必要性」は、ケアマネージャーの相談業務の中でも一番多い質問であったため追加されたと考えられます。
②「MDS方式」からの主な追加項目
「MDS方式」からの主な追加項目は、「相談受け付け内容」とあとは、「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目と同様になります。
(3)認知の追加項目
①「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目
「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目は、「精神状態の急な変化」及び「過去90日間(または前回のアセスメント以降)の意思決定能力の変化」になります。「精神状態の急な変化」は、認知症の進行を確認するのに有効な判断基準であるため追加されたと考えられます。「過去90日間(または前回のアセスメント以降)の意思決定能力の変化」が追加されたことから、認知症のアウトカム評価は90日単位で評価される可能性が高いことが考えられます。
②「MDS方式」からの主な追加項目
「MDS方式」からの主な追加項目は、「精神状態の急な変化」になります。
(4)心理社会面の追加項目
①「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目
「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目は、「孤独」、「日中、1人きりでいる時間」、「自発性・参加意識」、「対人関係の不安定」、「過去90日間の大きなストレス」になります。「孤独」、「日中、1人きりでいる時間」、「自発性・参加意識」、「対人関係の不安定」は、高齢者の社会参加への評価になります。このことから、このことから高齢者の社会参加に関してのアウトカムも評価対象になることが考えられます。
②「MDS方式」からの主な追加項目
「MDS方式」からの主な追加項目は、「自発性・参加意識」、「対人関係の不安定」、「過去90日間の大きなストレス」になります。
(5)機能状態の追加項目
①「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目
「居宅サービス計画ガイドライン方式」からの主な追加項目は、「活動状況」、「過去90日間のADLの変化」、「自転車の運転」、になります。認知症の評価同様、ADLへのアウトカム評価は90日間隔での評価になりそうです。
②「MDS方式」からの主な追加項目
「MDS方式」からの主な追加項目は、「自転車の運転」になります。
(6)アクティビティの追加項目
アクティビティへの評価は「居宅サービス計画ガイドライン方式」と「MDS方式」にはなかった評価基準になります。これにより、社会活動への参加までの評価から参加後の評価も行われることになり。介護事業者は社会参加後のアフターフォローも充実させることを求められていることが考えられます。
5.今後の介護サービス評価
国が目標としている介護サービスの「効果的・効率的」の提供のためにも、介護サービスのアウトカム評価は重要なものになってくるかと思います。そして、ストラクチャー評価、プロセス評価は減少していくことが考えられます。
アウトカム評価の大きなカテゴリーとしては、①介護度の改善・進行を遅らせる、②認知症の改善・進行を遅らせる、③ADL・IADLの改善、④社会参加になり、評価される期間は90日間が目安になる可と思います。
以上が、平成27年6月25日に行われた第123回「社保審一介護給付費分科会」で議論された「介護報酬でのサービスの質の評価の導入に関する取組」についてになります。