ほっと・ケアライフ通信
第20回 介護報酬でのサービスの質の評価の導入について①
今回のほっと・ケアライフ通信は、平成27年6月25日に行われた第123回「社保審一介護給付費分科会」で議論された「介護報酬でのサービスの質の評価の導入に関する取組」についての資料が公表されましたので、ご紹介させていただきます。
今後の介護報酬の基本報酬や加算を予測するためにも重要な資料でしたので、是非ご拝読頂ければと思います。
1.介護サービスの質の評価の視点
現在、介護サービスの質の評価は、①ストラクチャー(構造) ②プロセス(過程) ③アウトカム(結果)の3つに分類されます。
①ストラクチャー評価とは、「人的配置等」への評価になります。訪問介護だと、1つの事業所にサービス提供責任者が、一定の人数以上配置されていると加算される「サービス提供体制強化加算」がこれに該当します。
②プロセス評価とは「事業所と利用者相互作用等」への評価になります。つまり、事業者が利用者に対して具体的にどのようなサービスを行っているかについての評価になります。通所介護だと、一定の人員を配置し利用者ここに合わせた機能訓練を行った場合に加算される「個別機能訓練加算」がこれに該当します。
③アウトカム評価とは「サービスによりもたらされた利用者の状態変化等」への評価になります。介護老人保健施設だと、在宅への復帰率が高い施設に加算される「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」がこれに該当します。
①、②の視点は介護保険制度創設時から導入されており、③の視点は平成18年度から導入されました。
主な加算項目は以下の通りになります ※第123回「社保審一介護給付費分科会」資料より抜粋
ストラクチャー評価やプロセス評価に比べてアウトカム評価の項目が、圧倒的に少ない事が分かります。
2.各視点の課題
(1)ストラクチャー評価の課題
ストラクチャー評価の評価対象である、人員配置等の基準は事業者等が人員を揃えてしまったら評価対象になってしまいます。そのため、その後の人員配置を用いて効果的・効率的なサービス提供を行っているかどうかは疑問が残ります。
(2)プロセス評価の課題
プロセス評価についても、上述した「個別機能訓練加算」を例にすると、個々に合った機能訓練を行うこと自体が評価対象となるため、その訓練の結果については評価に反映されていないという点ではストラクチャー評価と同様です。
(3)アウトカム評価の課題
アウトカム評価、つまり、結果で評価する方法は一番合理性があります。しかし、介護サービスにおいて、結果で評価する場合大きく4つの問題点があると、厚生労働省が平成21年に発表した「介護サービスの質の評価のあり方に係る検討に向けた事業報告書」ではされています。
- 介護サービスについては、どのような内容をアウトカム評価としての項目として設定すべきかの判断が、社会的・文化的価値観の違いや個人の人生観や思想信条の相違に左右されることから、評価項目の設定について合意を得ることが困難であること。
- 高齢者は身体・精神機能の悪化・改善を繰り返すことが多く、評価する時点によって全く異なった判定となり得ることから評価時点の設定が困難になること。
- 事業所の努力や責任の及ばない要因の影響(例えば、家族や本人の努力)により、高いアウトカムが得られることがあり、アウトカムが事業所のサービスの質を反映しているとは限らない。
- 居宅サービスの利用者は、様々なサービスの組み合わせで利用している場合が多く、要介護度や自立度などの指標が改善したとしても、提供される介護サービスの中のどのサービスが効果的であったかの判断が困難であること。
上記した4つの課題を大きくまとめると問題となっているのは、介護サービスの「適正な評価」であることが分かります。適正な評価のためには、適正な評価基準が必要不可欠になります。
3.介護サービスの評価基準
介護サービスを評価する方法としては、利用者の介護計画を組み立てており、利用者の受けている介護サービスを実際に把握している、居宅介護支援員(ケアマネージャー)による評価が、問題はいくつかあるが一番妥当性があると思います。
現在のケアマネージャーによる利用者の評価方法は、様式が決まっていない状態です。三菱総合研究所の「介護保険サービスにおける質の評価に関する調査研究事業」によると一番多く利用されている様式が「居宅サービス計画ガイドライン方式」で全体の27%、続いて多く利用されているのが「MDS-HC方式」で全体の20%になります。
適正なアウトカム評価のためには評価基準を明確にして、統一しなければなりません。
そこで新たな評価基準として現在注目されているのが、「インターライ方式」です。
次回のほっと・ケアライフ通信では、「インターライ方式」についてお送りさせて頂きます。
失礼いたします。