ほっと・ケアライフ通信
第19回 介護予防・日常生活支援事業と生活支援体制整備事業について
今回のほっと・ケアライフ通信は、前回と同じく平成27年5月19日に厚生労働省が開催した「第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議」で発表された「介護予防・日常生活支援総合事業と生活支援体制整備事業」についての資料が公表されましたので、ご紹介させていただきます。
1.新しい総合事業の目的・考え方
新しい総合事業の目的・考え方については、以下のように発表がありました。
(1)新しい総合事業の趣旨
総合事業は市町村が中心となって、地域の実情に応じて住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域の支え合い体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すもの。
(2)背景・基本的考え方
①多様な生活支援の充実
住民主体の多様なサービスを支援の対象とするとともに、NPO、ボランティア等によるサービスの開発を進める。併せて、サービスにアクセスしやすい環境の整備も進めていく。
②高齢者の社会参加と地域における支え合い体制づくり
高齢者の社会参加のニーズは高く、高齢者の地域の社会的な活動への参加は、活動を行う高齢者自身の生きがいや介護予防等ともなるため、積極的な取り組みを推進する。
③介護予防の推進
生活環境の調整や居場所と出番づくりなどの環境へのアプローチを含めた、バランスのとれたアプローチが重要。そのため、リハビリ専門職等を活かした自立支援に資する取組を推進する。
④市町村、住民等の関係者間における意識の共有と自立支援に向けたサービス等の展開
地域の関係者間で、自立支援・介護予防といった理念や、高齢者自らが介護予防に取り組むといった基本的な考え方、地域づくりの方向性等を共有するとともに、多職種によるケアマネジメント支援を行う。
⑤認知症施策の推進
ボランティア活動に参加する高齢者に研修を実施するなど、認知症の人に対して適切な支援が行われるようにするとともに、認知症サポーターの養成等により、認知症に優しい街づくりに積極的に取り組む。
⑥共生社会の推進
地域のニーズが要支援者等だけではなく、また多様な人との関わりが高齢者の支援にも有効で、豊かな地域づくりにつながっていくため、要支援者等以外の高齢者、障碍者児童等がともに集える環境作りに心がけることが重要
第18回ほっと・ケアライフ通信でご紹介させていただいた「地域包括ケアシステム」は、今回の新しい総合事業の核となるシステムになります。よって、総合事業の背景・基本的考え方も同様なものになります。(2)背景・基本的考え方の①~④は「介護保険の効率的・効果的運用」、⑤~⑥は「住み慣れた地域での生活の継続」が考え方の裏付けとなっていると考えられます。
2.新しい介護予防事業
※第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議資料より抜粋今回の新しい介護予防事業では、従前の介護予防事業では区別されてきた、「一次予防」(健康なものを対象に、健康な状態を維持するための取り組み)」、「二次予防(要支援者又は要介護者に陥る可能性の高い高齢者が、要支援者又は要介護者にならないようにするための取り組み)」を区別することをやめました。これは、区別しないことによって一体的で切れ目のない介護予防事業にすることが目的だと考えられます。
新しい介護予防事業では、地域包括ケアシステムの目標でもある「介護保険料の効果的・効率的な運用」と「住み慣れた地域での生活の継続」の観点から、「地域リハビリテーション活動支援事業」が新設され、従前の介護予防事業にもありました「地域介護予防活動支援事業」が重要視されることが考えられます。
「地域介護予防活動支援事業」は地域住民主体の介護予防活動になりますが、似たようなものに介護予防・生活支援サービス事業の「訪問型・通所型サービスB(住民主体による支援)」があります。次は、この2つの違いについて通所型サービスB(住民主体による支援)を例にご説明させていただきます。
※第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議資料より抜粋①サービス内容
サービス内容については、大きく異なるところはなさそうです。
②対象者とサービス提供の考え方
通所型サービスBが「要支援者等」、地域介護予防活動支援事業が「主に日常生活に支障のないもので、介護予防が見込まれるケース」となっています。サービス対象者の健康状態によってどちらのサービスを受けるか異なることになりそうです。
③実施方法
実施方法は、通所型サービスBが「運営費補助/その他補助や助成」、地域介護予防活動支援事業が「委託/運営費補助/その他補助や助成」となっています。地域介護予防活動支援事業は、地域住民主導では新しくサービスを作っていくことが難しいと考えられるため、地域が主導して委託により事業を行うことが多くなると考えられます。
④市町村の負担方法
市町村の負担方法は、通所型サービスBが「事業経費の補助」、地域介護予防活動支援事業が「間接経費の補助」となっております。事業経費とは事業を運営していくにあたって、必要な費用になります。間接経費とはもともと製造業における費用になります。製品1つ作るために、原料など具体的な金額が分かるものを直接経費、電気代など製品1つ作るために具体的な金額が分からない費用を間接経費といいます。サービス業における間接経費は明確化されにくいですが、水道光熱費や家賃が該当するかと考えられます。つまり、通所型サービスBより、地域介護予防活動支援事業の方が受けられる金銭援助に制限があると考えられます。
⑤ケアマネジメント
ケアマネジメントは、通所型サービスBが「あり」、地域介護予防活動支援事業が「なし」となっております。通所型サービスBの方が大きく補助を受けられるため、地域介護予防活動支援事業より、通所型サービスBの方が利用に制限があると考えられます。
⑥利用者負担額
利用者負担額は、通所型サービスBが「サービス提供主体が設定(補助の条件で、市町村が設定することも可)」、地域介護予防活動支援事業が「市町村が設定(補助の場合は、サービス提供者が設定することも可)」となっております。
⑦サービス提供者(例)
サービス提供者は、通所型サービスBが「ボランティア」、地域介護予防活動支援事業が「地域住民」と例示しています。
3.生活支援・介護予防サービスの分類と活用例
※第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議資料より抜粋上の図は、生活支援・介護予防サービスの分類と活用例になります。上記の図を見ると、②家事支援、③交流サロン、④外出支援、⑤見守り・安否確認は「NPO・住民・ボランティア」が中心としてやっていくことが考えられます。
以上が「第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議」で発表された「介護予防・日常生活支援総合事業と生活支援体制整備事業」のご紹介になります。
次回のほっと・ケアライフ通信では、同じく「第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議」で発表された「地域づくりによる介護予防の推進」をご紹介させていただきます。