ほっと・ケアライフ通信
第18回 地域包括ケアシステムの構築
今回のほっと・ケアライフ通信は、平成27年5月19日に厚生労働省が開催した「第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議」で発表された「地域包括ケアシステムの構築」についての資料が公表されましたので、ご紹介させていただきます。
1.地域包括ケアシステム構築の背景
地域包括ケアシステムは、いわゆる団塊の世代の方が後期高齢者になる2025年問題に対応するためのシステムになります。なぜ、2025年までに特別な対策システムが必要になるかといいますと、次の2つの問題があるためです。
②介護保険料を負担する40歳以上の人口が2025年以降減少する傾向にあること
以上の2つの問題から、今から介護保険料の効果的・効率的な運用が必要となってきました。この問題を解決するために、まず国は「地域包括ケアシステムの充実」を実行に着手しました。「地域包括ケアシステム」とは、「医療」・「介護」・「予防」・「住まい、住まい方」・「生活支援、福祉サービス」」の5つの要素が包括的に確保されている状態のことになります。
「地域包括ケアシステム」の構築において、注目されている1つが上記の5つの要素のうち「生活支援」になります。現在のシステムでは、「生活支援」は医療・介護の専門職の方が行っている場合が多いことが現実的にあります。サービス利用者の代わりに買い物に行ったり、掃除をしたりする「生活支援」を専門職の人が行うことは、限られた医療保険・介護保険の財源や専門職の人員の効率的・効果的運用の妨げになります。そのため今回の「地域包括ケアシステム」では、「生活支援サービス」はできるだけ、民間事業者やボランティアなどへの移行を目指しています。他に注目されている要素としては「予防」がありますが、ほっと・ケアライフ通信第20回にてご紹介できればと思います。
2.地域包括ケアシステムの考え方
「1.地域包括ケアシステム構築の背景」でも記述しました通り、地域包括ケアシステム」とは、「医療」・「介護」・「予防」・「住まい、住まい方」・「生活支援、福祉サービス」の5つの要素が包括的に確保されている状態のことになります。具体的には、「地域住民は住居の種別(従来の施設、有料老人ホーム、グループホーム、高齢者住宅、自宅)に関わらず、おおむね30分以内(日常生活域、具体的には中学校区)に生活上の安全・安心・健康を確保するための多様なサービスを24時間365日を通じて利用しながら、病院等に依存せずに住み慣れた地域での生活を継続することが可能」な状態になります。
「1.地域包括ケアシステム構築の背景」でもご紹介したとおり、「地域包括ケアシステム」の構築の背景には、限られた医療保険・介護保険の財源や専門職の人員の効率的・効果的運用がありますが、他にも地域包括ケアシステムを推進する理由があります。厚生労働省の調査によると、介護を受ける本人の約75%、介護受ける本人の家族の約80%が在宅での介護を望んでいるという結果が出たことになります。そのため、「住み慣れた地域での生活の継続」も目標の1つとなっています。
この「地域包括ケアシステム」を実現するために、重要な課題は、①人材の適正な役割分担 ②地域の特性に応じたシステムの構築、以上2点になります。①は「1.地域包括ケアシステム構築の背景」でもご紹介したとおり、限られた医療保険・介護保険の財源や専門職の人員の効率的・効果的運用のために必要なことになります。②は、都市部と郊外とでは、高齢者人口の増加率や増加時期などが大きく異なるため、その地域の実情に合ったシステムの構築が求められるためです。
「地域包括ケアシステム」とは、「医療」・「介護」・「予防」・「住まい、住まい方」・「生活支援、福祉サービス」の5つの要素でなりたっており、もっと大きく分けると「介護・医療・予防」、「住まい、住まい方」・「生活支援、福祉サービス」の3つに分けることが出来ます。「介護・医療・予防」は専門職によって有機的に連携し、一体的に提供されることが望まれます。「住まい、住まい方」は生活の基盤であり、本人の希望と経済力を反映した住まい方の確保が地域包括ケアシステムの前提となります。「生活支援、福祉サービス」は、いつまでも尊厳のある生活が継続できるように生活支援を行うことが望まれます。サービスの幅が広く担い手も多様であることが特徴です。
地域包括ケアシステムを考える上で重要な言葉に「自助」「公助」「共助」「互助」の4つがあります。「自助」とは自分の事は自分ですることに加え、市場サービスの購入も含まれます。「公助」とは税による公の負担になります。「共助」は介護保険などリスクを共有する人たちの負担によるものになります。「互助」は、相互に支え合っているという意味では「共助」に近いが、「共助」と異なり費用負担の制度的裏付けがなく、自発的なものになります。
地域包括支援システムでは、限界がある「公助」と「共助」よりも、まだまだ開拓の余地がある「自助」と「互助」の整備を進めることに重点を置いています。しかし、都市部では民間サービスの市場が多いため「自助」の割合が大きく、都市部以外では「互助」の割合が大きいなど地域によって、整備の仕方が異なることが予想されます。
3.高齢者のニーズに応じた対応体制の構築
高齢者のニーズに応じた対応体制については、大きく①生活支援と介護予防への対応強化(特に軽度者)と②介護医療サービスの充実(特に中重度者)の2つの視点で構築されます。①については地域力(自助・互助)による高齢者の活動向上と社会参画の促進、②については介護・医療サービスの充実と医療・介護(多職種)連携の推進が課題となります。
- 高齢者のみの世帯が増加に伴い、生活支援の必要性も増加。ボランティア、民間企業 等の多様な主体によるサービス提供を強化する
- 介護予防のための、高齢者の社会への参加促進及び社会的役割の配分
- 地域資源の開発・有効活用のために「生活支援サービスコーディネーター」の設置。
この設置は介護保険法の地域支援事業に位置付ける。
「生活支援サービスコーディネーター」については、地域支援事業の中の包括的支援事業の1つになり、地域包括支援センターと連携をとり活動していきます。「生活支援サービスコーディネーター」に限らず「地域包括ケアシステム」は地域包括支援センターを中心に組み立てられます。そのため、地域穂活支援センターの機能強化が重要です。
※介護保険最新情報 VOL407より抜粋つづきまして、②介護医療サービスの充実(特に中重度者)の「介護・医療サービスの充実」と「医療・介護(多職種)連携の推進」についてご説明させていただきます。
今回の「都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議」では、「介護・医療サービスの充実」は平成27年度の介護報酬の改定を大きな対応の1つとしています。具体的には介護保険点数の加算による中重度者へのサービスの充実や、処遇改善加算の加算率アップ、適正な介護保険の適用として集合住宅へのサービスの適正化などになります。
「医療・介護(多職種)連携の推進」については地域包括ケアシステムを含む地域支援事業の充実を対応策として出しています。「医療・介護(多職種)連携の推進事業」の具体的な事業項目は次のものになります。①地域の医療・介護の資源の把握、②在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討、③切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築推進、④医療・介護関係者の情報共有の支援、⑤在宅医療・介護連携に関する相談支援、⑥医療介護関係者の研修、⑦地域住民への普及啓発、⑧在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携、の8つになります。
「医療・介護(多職種)連携の推進」の大きな問題としては、「訪問診療を行っている医療機関の数が十分ではない」ことと「ケアマネージャーと医師との連携が取れていない」ことの2点になります。
参考資料「医療・介護(多職種)連携の推進事業の予算」
※第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議資料より抜粋以上が「第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議」で発表された「地域包括ケアシステムの構築」のご紹介になります。次回のほっと・ケアライフ通信では、同じく「第1回都道府県介護予防担当者・アドバイザー合同会議」で発表された「介護予防・日常生活支援総合事業と生活支援体制整備事業」をご紹介させていただきます。