ほっと・ケアライフ通信
第13回 総合事業Q&A2015.2発表分後編
今回のほっと・ケアライフ通信は、前回に引き続き厚生労働省により発表された「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aの続編について考察していきます。
平成27年2月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「サービスの類型」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「自立支援に向けた関係者間での意識の共有」について、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、(5)「円滑な事業への移行・実施」について、の5つに分かれています。
今回のほっと・ケアライフ通信では、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について考察していきます。
(4)「総合事業の制度的な枠組み」については、次の質問についての回答が発表されました。
Q1 ガイドラインで例示されている訪問型サービスA、通所型サービスAでは指定事業者が実施する場合と、委託や補助の方法で実施する場合が示されている。このとき、委託や補助の方法で実施したものは限度額管理を行わないという認識でよいか。また、限度額管理の上限額との関連はどのように整理すればよいのか。
A1 平成26年9月30日版Q&A53頁、問18でお示ししているとおり、指定事業者を使用したサービスについては、個別のサービスを受けその利用状況に応じた対価を支払うサービスであり、また国保連を活用するサービスであることから、限度額管理の対象とすることとしている。したがって、委託や補助の方法で実施した緩和した基準によるサービス(訪問型サービスA・通所型サービスA)について、基本的に限度額管理を行うことは想定していない。いずれにしても、地域包括支援センター等のケアマネジメントにおいては、限度額管理の対象かどうかに関わらず、利用者の状態等を踏まえ、効果的・効率的なサービス提供を進めることが重要である。
限度額管理とは、サービスを利用出来る限度額を定め、限度額を超えた部分については、国や市町村の補助が受けられなくなることです。現行の介護保険サービスはこれに該当します。
平成26年9月30 日版Q&Aでは、指定事業者を使用したサービスのみを「限度額管理」の対象としています。介護予防・日常生活支援総業事業における指定業者を使用したサービスとは、「現行の訪問介護・通所介護に相当するサービス」と「緩和した基準によるサービス(訪問型サービスA・通所型サービスA)」の2つのサービスになります。この2つのサービスについては、限度額管理の対象となり市町村の補助を利用したサービスの利用に制限がかかります。
Q2 総合事業の事業所指定に際して、地域密着型サービスのように運営協議会からの意見聴取は必要か。また、公募による指定を実施することはできるか。さらに、指定ではなく委託で実施する場合にあってはどうか。
A1 新しい総合事業については、事業の実施主体である市町村が地域の実情に応じて取り組んでいただくものであって、総合事業の事業所指定についても介護給付のデイサービス等の事業所指定とは異なり、例えば、ガイドライン案P96において「要綱等に規定された計画量を超える場合などには指定を行わないなどの取扱いも考えられる」と記載しているところである。このため、運営協議会からの意見聴取や公募の有無についても、市町村で判断いただくこととしているものである。なお委託による方法の場合も同様である。
介護予防・日常生活支援総業事業における、事業所指定と業務委託についての指定又は委託の決定方法についての質問になります。そして、決定方法については全て市町村にゆだねる旨の回答がなされました。市町村の財源には限りがあること、決定方法・計画量については市町村に権限があることから、地域によっては事業所指定と業務委託を受けることは相当困難なことになることが予想されます。
Q3 訪問型サービスC及び通所型サービスCについて、市町村が直接実施する場合、食材料費等の実費分を除き、利用者負担を徴収しない扱いは認められるか。
A1 現行の訪問介護・通所介護相当のサービス等、保険給付との整合性を図る必要性があるサービスについては、介護給付の利用者負担割合を勘案し、利用者負担を定める必要があると考えているが、訪問型サービスC及び通所型サービスCについては、市町村がサービス内容等を踏まえて定めるものであり、ご質問のように利用者負担を徴収しない扱いもあり得るものと考えている。なお、訪問型サービスC及び通所型サービスCについては、典型的には、高齢者のADLやIADLの改善に向け、専門職が関わりつつ、短期間で行われるプログラムが想定されるところであり、適切なサービス提供がなされるように留意することが必要である。
訪問型サービスC・通所型サービスCとは、市町村が直接または市町村からの委託によるサービスになります。サービス内容は保健師等による短期集中介護予防です。今回の回答から、現行の訪問介護・通所介護に相当するサービスと緩和した基準によるサービス(訪問型サービスA・通所型サービスA)以外の総合事業によるサービスについては利用者負担はないが、食材料費等の実費分については利用者負担があることが読み取れます。
Q4 市町村が補助や委託の形で事業実施している住民主体のサービスで利用者負担がある場合、これを市町村の歳入として扱い、手数料条例や予算に計上する必要があるか。
A1 補助の形で実施する場合には、一般的に、当該補助事業の利用者負担を市町村の歳入(公金)とすることは想定されず、条例の制定や予算の計上は不要であると考えられる。
一方、委託の形で実施する場合にも、利用者負担を公金として徴収するのでないならば、条例の制定や予算への計上は不要であると考えられるが、当該委託契約の内容等により、判断されるべきものと考える。
歳入(公金)とは、市町村が特定の目的を達成するために所有する金銭になります。そのため、歳入(公金)を得るためには、その金銭が何のためにどれぐらい必要かを条例や予算で決めなければなりません。
次は、委託業務と補助業務の内容の違いについてご説明させていただきます。委託業務とは「業務を他の特定の者に任せ、その対価を求める業務」、補助業務とは「特定の事業を行う者の補助を行い、対価を求めない業務」になります。補助業務については、通常は市町村が対価として受け取る金銭はないため、条例の制定や予算を計上する必要はないかと思います。しかし、委託業務については対価を求めるものなので、条例の制定や予算の計上を行い歳入(公金)としての性格を持たせた方が、総合事業を市町村が適切に運営していくために必要かと考えられます。
Q5 利用者負担割合について、介護予防訪問介護等相当サービスについては、介護給付の利用者負担割合を勘案する旨の表記があるが、緩和した基準によるサービスについても同様の考えとすることとして良いか。
A1 緩和した基準によるサービスに係る利用者負担割合については、相当サービスにおいて設定した自己負担割合等も勘案しつつ、サービス内容に応じて各市町村の判断により適切に定められたい。
Q6 事業対象者の限度額管理について、9 月30日Q&A(P53)問19 に、予防給付の要支援1の限度額を超える場合の限度額をあらかじめ高く設定することは想定していないとあるが、その場合、ケアマネジメントの中で地域包括支援センターが上限額を設定すると解釈してよいか。また、その場合の上限額や上限緩和する期間(3ヶ月程度等)について目安を示される見込みはあるか。
A1 事業対象者の区分支給限度基準額については、ガイドライン(案)P111 に記載のとおり「予防給付の要支援1の限度額を目安として行う」ものとしているが「指定事業者によるサービス以外の多様なサービス等の利用状況も勘案してケアプランを作成することが適当」であり、「例えば、退院直後で集中的にサービスを利用することが自立支援につながると考えられるようなケース」など、利用者の状態によっては要支援1の区分支給限度額を超えることもあるが、これらは介護予防ケアマネジメントの中で判断されるものと考えている。なお、その場合であっても、上限額の設定については、保険給付との整合性の観点から要支援2の区分支給限度基準額を超えることは想定しておらず、それを前提として市町村が事業の実施要綱等において定めるべき事項であり、目安をお示しする予定はない。
総合事業では、指定事業者によるサービスについては限度額を設け、給付管理を行うとしており、その限度額は現行の予防給付の要支援1の限度額を目安としています。しかし、退院直後など利用者の健康状態によっては、限度額を超えた額を新たな限度額とすることが可能としています。
今回のQ&Aでは上記の限度額について、限度額を超える限度額を設定するかどうかは、介護予防ケアマネジメントの中で判断されるものとしています。そして、限度額を超える場合も、現行の予防給付の要支援2の限度額を限度としています。明確な限度額については、市町村が決定するとしています。
Q7 国保連での介護予防ケアマネジメントにおける給付管理(サービスとケアプランの突合作業)はどのように行われるのか。これまではサービス利用料は事業所から、プラン代は包括支援センターから、それぞれ国保連へ請求されたため、国保連で突合作業を行っていたが、新しい総合事業導入後は、プラン代が市町村へ請求されるため、国保連での突合作業ができなくなる。市町村から国保連へプランの情報を提供することで、これまでどおり国保連での作業ができるように、国から通知等を出して徹底してもらうことはできないか。
A1 介護予防・日常生活支援総合事業における給付管理(サービスとケアプランの突合作業)の審査については国保連合会を活用できるようにしており、国保連合会に審査支払事務を委託する場合は、予防給付と同様、介護予防ケアマネジメントを実施する地域包括支援センターにおいて給付管理票を作成し、国保連合会に提出する必要がある。なお、介護予防ケアマネジメントについては、介護予防支援とは異なり、給付管理票と介護予防ケアマネジメントに関する請求明細書が別に取り扱われる。したがって、要支援者に対する介護予防ケアマネジメント費について、例外的に審査支払を国保連合会に委託することは可能であるが、介護予防ケアマネジメント費と給付管理票との突合審査は行われない(仮に、給付管理票が存在しない場合でも介護予防ケアマネジメント費は支払われる)ことに留意されたい。また、国保連合会へ審査支払い事務を委託した場合の介護予防・日常生活支援総合事業の事務処理の流れは以下のとおり。(平成26年12月26日付事務連絡「介護保険事務処理システム変更に係る参考資料の送付について」で発出しているものをそのまま添付している。)
現行の予防給付事業では、要支援者のケアプランは地域包括支援センターが作成しています(例外として市町村から委託を受けた居宅介護支援事業所も可能)。そして地域包括センターから給付管理票、各事業所から介護予防に関する介護予防サービスの請求明細書が国保連に送られ、給付管理票と請求明細書との間にズレがないかが確認されます(突合審査)。
今回の介護予防・日常生活支援総合業事業では、基本的に介護予防ケアマネジメントの審査支払は各市町村に任せることになっています。例外的に国保連に審査支払を委託することは出来ますが、その場合は給付管理票と請求明細書との間にズレがないかの確認(突合審査)はされません。国保連が行うのは、地域包括支援センターの介護予防ケアマネジメント費や指定事業者のサービス提供費の請求書を受けて支払いをし、その支払いをした金額を各市町村に請求することだけになります。そのため、給付管理票が無くても請求書が届けば国保連は地域包括支援センターや指定事業者へ支払業務を行い、各市町村への請求業務をおこないます。
つまり、介護予防・日常生活支援総合業事業の財源は各市町村の負担になるので、その管理は各市町村でするべきとしていると考えられます。
※国保連へ審査支払業務を委託した場合の介護予防・日常生活支援総合事業の事務処理の流れ
Q8 高額介護予防サービス費相当事業については「事業を実施する」とあるが、高額医療合算介護予防サービス費相当の事業については「事業を行うことが適当である」となっている。高額医療合算介護予防サービス費相当の事業については市町村の判断によって実施しないという選択肢もあるということか。
A1 新しい総合事業は、市町村が地域の実情に応じて実施する事業であることから高額医療合算介護予防サービス費相当の事業を実施するか否かは市町村で判断いただくこととなる。なお、ガイドライン(案)P112 において「高額医療合算介護予防サービス費と同様に、事業により利用者負担を軽減することも想定され、市町村はそのような軽減に配慮した事業を行うことが適当である」としているところ、いずれにしても利用者負担に配慮して事業を行うことが適当であると考えている。
高額介護(介護予防)サービス費とは、一定の所得の世帯に対して介護サービスの自己負担額の上限額を定め、その上限を超えた金額は要介護者に払い戻される制度になります。高額医療合算介護(介護予防)サービス費相当は、一定の所得の世帯に対して介護サービスの医療費と介護費の自己負担額の合計額の上限額を定め、その上限を超えた金額は要介護者に払い戻される制度になります。ちなみに、医療保険者から支給されるものは「高額介護合算療養サービス費」、介護保険者から支給されるものは「高額医療合算介護サービス費」となります。
高額介護予防サービス費については、介護予防・日常生活支援総合業事業へ移行され、高額医療合算介護予防サービス費については、廃止するか介護予防・日常生活支援総合業事業へ移行するかは市町村の判断としています。
高額介護予防サービス費及び高額医療合算介護予防サービス費の対象となる者についてガイドライン(案)では、要支援者は基本的に個人では自己負担額の上限額に到達することはないと考えられているため、同世帯に要介護者と要支援者が混在している場合の適用になるとしています。
Q9 新しい総合事業へ段階的に移行(ex.28~29 年度にかけて移行)する場合、総合事業の上限はどの時点(移行開始年度、完全移行年度)から適用されるのか。
A1 総合事業の上限については、移行開始年度から適用される。
介護予防・日常生活支援総合業事業の予算の上限額は、原則次のように定められます。
予算上限額=総合事業開始の前年度の予防給付と介護予防事業の総額×当該市町村の75歳以上高齢者人口の増加率
以上が平成27年2月に発表された、(4)「総合事業の制度的な枠組み」についてのQ&Aの考察になります。