ほっと・ケアライフ通信
第10回 総合事業Q&A2015.1発表分(3)
前回に引き続き今回のほっと・ケアライフ通信も、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aが、厚生労働省老健局振興課により発表されましたので、このQ&Aについて考察していきます。
平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「総合事業に関する総則的な事項」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「サービス利用の流れ」について、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、(5)「その他」について、の5つに分かれています。今回のほっと・ケアライフ通信では、(3)「サービス利用の流れ(前編)」について考察していきます。
「総合事業に関する総則的な事項」については、次の11の質問についての回答が発表されました。
A2 このような趣旨を踏まえた上で、介護予防アマネジメントのプロセスを、利用者と相談しながら進める中で、目標の達成に向けてどの類型のサービスを利用するのが望ましいかを判断していただきたい。
介護予防・日常生活支援総合事業により、現行の訪問介護・通所介護相当のサービスの一部と二次予防事業が統合されることになりました。しかし、現時点では、現行の訪問介護・通所介護相当のサービスについては、従来の介護保険におけるケアマネジメントによりサービスが決められており、二次予防事業については、介護予防ケアマネジメントによりサービスが決められています。
※2つのケアマネジメントの比較介護保険によるケアマネジメント | 介護予防ケアマネジメント | |
目的 | 自立支援・家族支援 | 自立保持 |
担当者 | ケアマネージャー | 地域包括支援センター |
判断 | 介護認定審査会 | 市町村 |
ケアプラン作成 | 必須 | 必要な場合のみ作成 |
支援内容 | 主に介護サービス(インフォーマルサービスで保管) | 介護予防事業とインフォーマルサービスを組み合わせて実施 |
この質問で問題としていることは、現行の訪問介護・通所介護相当のサービスの一部と二次予防事業といった、異なるケアマネジメントによりサービス内容が決められているものが、介護予防・日常生活支援総合事業により統合されたときどちらのケアマネジメントでサービス内容を決めるのか、ということだと考えられます。
今回の回答では、介護予防・日常生活支援総合事業の目的を考えると、介護予防によるケアマネジメントによりサービス内容を決めるべきとしています。
介護予防・日常生活支援総合事業により、現行でいう要支援の方の介護に直接かかる費用だけではなく、こういったケアプランの作成やサービスが必要かどうかの判断なども市町村が行うことになるため、市町村の人的負担や費用負担は大きくなっていきます。介護予防・日常生活支援総合事業の一部を住民やボランティアに上手く委託していかないと市町村の経営も難しくなっていくことになりそうです。
A2 しかし、例えば本人が入院中で来所できない等の場合は、電話や家族の来所による相談に基づいて基本チェックリストを活用し、介護予防ケアマネジメントにつなぐこともできることとしている。ただし、介護予防ケアマネジメントのプロセスの中で、地域包括支援センター等が本人の状況を確認するとともに、サービス事業の趣旨として、①要支援状態からの自立の促進や重症化予防の推進をはかる事業であること、②ケアマネジメントの中で、本人が目標を立て、その達成に向けてサービスを利用しながら一定期間取り組み、達成後は次のステップに移っていくことを説明し、理解を得た上で適切なサービスの利用につなげていただきたい。
基本チェックリストとは質問形式のアンケートで、このアンケートの回答により介護予防・日常生活支援総合事業の対象者とするかどうかを判断します。
A2 その際、生活機能の改善や自立支援に向けて、利用者本人が取り組む部分と専門職等の支援を受ける部分が生じる場合について、例えば、現行の通所介護相当のサービスや通所型サービスC(短期集中予防サービス)において利用者の状況に応じた身体の動かし方や体操の仕方などを専門職からアドバイスを受け、その他の日は、通所型サービスB(住民主体による支援)を利用するなど、利用者の自立支援に向けて、住民主体の支援等、対象者の状態等にふさわしい支援を組み合わせて利用することなどが考えられる。
A3 いずれにしても、総合事業における介護予防ケアマネジメントにおいては、適切なアセスメントの実施により、設定した目標の達成に向けて主体的に取り組めるよう、必要なサービス事業等を適切にマネジメントしていくことが必要である。
介護予防・日常生活支援総合事業は、「高齢者が自ら進んで事業や介護予防の活動に参加し、自分らしい生活を維持できるようにすること」を目的としており、そのためには、高齢者が日常生活の中で気軽に参加できる活動の場が身近にあり、地域の人を通して活動が広がるような地域コミュニティが重要である、としています。
Q3の「介護予防ケアマネジメントにおいてサービスの利用を検討する際、組み合わせることのできないものはあるか。」については、A2の回答から、上述した介護予防・日常生活支援総合事業の目的に反しなければ、サービス同士を組み合わせることが可能であること考えられます。
A2 なお、B市においてA市での基本チェックリストを活用する場合は、利用者の同意を得てA市でのケアプラン等やサービス利用状況等もあわせて情報を収集したうえで、B市の事業の実施状況等をふまえて介護予防ケアマネジメントを実施し、サービスにつないでいただきたい。
今回の介護予防・日常生活支援総合事業により、大きく問題になることが予測されることの1つは「地域により受けられるサービスが異なる」といったことがあるかと思います。
介護予防・日常生活支援総合事業については、サービス内容からサービスを受けることが出来るかの判断まで、ほぼ全ての権限が市町村に委託されます。このことから、各市町村の財政や考え方によって、受けることが出来るサービスが大きく異なることが予測されます。事業者に関しても、どういうサービスが出来て、報酬がどのぐらいになるかは不透明な状態であり、各市町村で差が出てくることが考えられます。その他にも、市町村の財源によっては、事業所に所属するプロの介護者を使うと費用がかかるので、住民主体のサービスを中心にしてくることも予測されます。
A2 よって、総合事業におけるサービス事業を利用する場合には、介護予防ケアマネジメント依頼届出書の提出が必要である。
A3 なお、「介護予防ケアマネジメント依頼届出書」の様式としては、指定介護予防支援と介護予防ケアマネジメントについて併用できるよう、様式を通知等で示すことを検討している。
介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(案)P61によりますと、基本チェックリストを実施した場合は、一次予防のみを受ける場合以外は、地域包括支援センターに基本チェックリストを送付しなければならない、としています。そして、その後、各市町村に届出して登録しなければならない、としています。
Q5の質問は「市町村と地域包括センターは連携が取れているのだから、地域包括センターに送付した時点で市町村が登録すればいいのではないか。届出を出すのは民間が運営している居宅介護支援事業所に委託する場合のみでいいのではないか」という内容であると考えられます。
この質問に対し、今回のQ&Aでは、いずれの場合も届出の提出は必要であると回答しています。これから増えるであろう、市町村や地域包括センターの業務を少しでも減らしていこうとする考えが見られます。
A2 介護給付から予防給付又は介護予防・生活支援サービス事業に移行する場合は、居宅介護支援事業者から地域包括支援センターへケアマネジメントの実施者を変更することとなるため、届出が必要である。
A3 なお、要支援者が、予防給付から介護予防・生活支援サービス事業へ移行する際は、指定介護予防支援から介護予防ケアマネジメントへ移行することとなるが、この場合は、要支援者であることは変わらず、ケアマネジメントを実施する地域包括支援センターも変わらないため、届出書の提出は省略することもできる。一方、要支援者から基本チェックリストによるサービス事業対象者に移行する場合は、介護予防ケアマネジメント依頼届出によりサービス事業対象者として登録するため、届出書の提出が必要である。
介護予防ケアマネジメントの依頼届出の委任につきましては、利用者に対し不利益がないため、委任状は必要がなくしたものと考えられます。
A2 一方、保険者市町村は、介護予防・生活支援サービス事業対象者を登録したうえで、被保険者証を交付することが必要であり、施設所在市町村は、届出を受け取ったときは、速やかに保険者市町村に、届出書の写しを送付等することが必要である。
A3 施設所在市町村から連絡を受けた保険者市町村は、介護予防・生活支援サービス事業の対象者として登録し、被保険者証を発行することとなる。なお、サービス事業費を国保連合会を経由して支払う場合は、保険者市町村から国保連合会に住所地特例対象者を連絡する必要がある。
※ 国保連合会に送る「介護保険受給者情報異動連絡票」については、住所地特例の欄を設け、施設所在保険者番号等設定できるよう変更となる。
住所地特例とは、「介護保険の被保険者は、原則として住民票がある市町村の介護保険を利用するが、介護保険施設等への入所に伴って当該施設の所在地に住所を移転した場合等すべての場合に住所地主義を貫くと、介護保険施設等の所在市町村の介護保険財政の負担が大きくなる等の不都合が生じる。そこで、一定の場合には、介護保険料は前住所地の市町村に支払うほか、要介護認定や介護給付も保険者である前住所地の市町村から受ける」という制度です。
今回のQ&Aでは、介護予防ケアマネジメントにも住所地特例対象の適用があり、施設所在市町村でのサービスを受ける、という回答でした。
以上が平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aのうち、(3)「サービス利用の流れ(前編)」についてのQ&Aでした。
次回は、(3)「サービス利用の流れ(後編)」についてのQ&Aについて考察させていただきます。