ほっと・ケアライフ通信
第9回 総合事業Q&A2015.1発表分(2)
前回に引き続き今回のほっと・ケアライフ通信も、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aが、厚生労働省老健局振興課により発表されましたので、このQ&Aについて考察していきます。
平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「総合事業に関する総則的な事項」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「サービス利用の流れ」について、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、(5)「その他」について、の5つに分かれています。今回のほっと・ケアライフ通信では、(2) 「総合事業に関する総則的な事項」について考察していきます。
「総合事業に関する総則的な事項」については、次の8つの質問についての回答が発表されました。
A2 ガイドライン案の第3の4の「表6 コーディネーター及び協議体の設置・運営に係る取組例」において、例示として、まずは生活支援サービスの充実に係る研究会を立ち上げ、その後各地域(日常 生活圏域等)に協議体を設置し、コーディネーターを選出していくという流れをお示ししているところ。これは、コーディネーターの候補がすぐには見つからない自治体や関係者の合意の上でコーディネーターを選出したい自治体も多いと思われる中、まず早期に協議体を設置し、その後、具体的な活動の中からコーディネーターを選出していただくことが典型的な例となると考え、お示ししたものであり、地域で適切な者がいる場合には、コーディネーターの配置を先に行うこともあると考えている。
A3 なお、コーディネーターを先に配置するか否かにかかわらず、協議体の役割は重要であり、例えば、まず、地域資源の開発や多様な主体のネットワーク化等を図るといった協議体の機能を有するような 既存の会議等も積極的に活用しつつ、地域で実際に活動の担い手となるような者について、必要最低 限参画いただき、協議体を早期に立ち上げ、徐々にメンバーを増やしていくなどといった方法で取組 みを進めることも有効であると考えている。
ガイドラインでは、協議会の設置目的を「生活支援・介護予防サービスの体制整備に向けて、多様な主体の参画が求められていることから、市町村が主体となって、定期的情報の共有・連携強化の場として設置することにより、多様な主体間の情報共有及び連携・協働による資源開発等の推進」としています。
一方、コーディネーターの設置目的は、「市町村が定める活動区域ごとに、関係者のネットワークや既存の取組・組織等も活用しながら、上記のコーディネート業務を実施することにより、地域における生活支援・介護予防サービスの提供体制の整備に向けた取組を推進すること」としています。
つまり、協議会は「多様な事業主体の定期的情報の共有・連携強化の場」が目的で、 コーディネーターは「サービス提供体制の整備」が目的となります。確かに提供体制の整備をしてから定期的情報の共有・連携強化の場を作った方が、流れはスムーズですが、新しい事業で準備期間もそこまで残されていないので、とりあえずサービスの提供を始めて、後々その整備をすることになるケースの方が多くなることも考えられます。
A2 高齢者の生活支援等のニーズについては、日々変化していくものと考えられるので、そのニーズの変化に合わせたサービスの提供体制の構築に継続的に取り組むことが必要であり、その中では資源開発やネットワーク構築等を行うコーディネーターの役割は大きいと考えている。また、コーディネーターについては、現場では、一人ひとりの高齢者が自立した日常生活を営むの に必要な援助に関する専門的知識及び技術を有する介護支援専門員などの専門職と連携することが重要であり、協議体の場等を活用して定期的に情報交換等を行うことが望ましいと考えている。
上述させて頂いた通り、コーディネーターの目的は「サービス提供体制の整備」となります。それに対して介護支援専門員(ケアマネージャー) とは、「要支援者と要介護者がその心身の状況等に応じ適切なサービスを受けるため、利用者とサービス提供主体との間に立って連絡調整を行うもの」とされています。つまり、介護支援専門員は利用者とサービス提供者との間に立つもので、利用者がどのようなサービスを求めており、それに対してのサービスの提供がどうなされているかをよく把握している存在になります。
そのため、コーディネーターと介護支援専門員が交流していくことは、的確にサービス提供体制の整備をしていくうえで、非常に重要なものとなっていくことが考えられます。
A2 一方、総合事業の介護予防・生活支援サービス事業において、住民主体の支援等で補助(助成)の方法で事業実施する場合には、サービスの利用調整等を行う人件費等の間接経費等を市町村の裁量により経費の対象とすることが可能である。
Q3を考察していく前に、コーディネーターと協議体によるコーディネート機能についてご紹介させて頂きます。
まず、コーディネート機能としては次の6つがあげられます。①地域のニーズと資源の状況の可視化及び問題提起、②地域組織等多様な主体への協力依頼などの働きかけ、③関係者のネットワーク化、④目指す地域の姿・方針の共有及び意識の統一、⑤生活支援の担い手の養成やサービスの開発、⑥ニーズとサービスのマッチング、以上の6つがコーディネーターの取り組みとなります。
次に、上記の取り組みを機能化させるコーディネート機能は、第1層・第2層・第3層に分かれて展開していくことが予定されています。
コーディネーター機能第1層 | 市町村区域で上記①~⑤を中心に行う機能 |
第2層 | 中学校区域で、第1層の機能の下、①~⑥を行う機能 |
第3層 | 個々の生活支援・介護予防サービスの事業主体で、利用者と提供者をマッチングする機能 |
生活支援体制整備事業(生活支援・介護予防サービスの体制整備を図るための事業)は、地域に根差した事業を目指しているため、第1層と第2層の機能の充実を重要視しています。
そのため今回の回答では、第3層の機能による総合事業の「介護予防・生活支援サービス事業の活用は、市町村の裁量により「可能」であるという回答にとどまっていることが考えられます。
A2 このように基本的には地域の人材をコーディネーターとして新たに配置することを想定しているところ、新たに人員を配置することに対しての財政支援を想定し、平成26年度から予算を確保してきており、そのような観点から平成26年9月30日付けのQ&Aでは既存の市町村の職員が兼務をすることは想定していないと回答した。コーディネーターとして市町村職員を配置することについて全て否定するものではなく、コーディネーターの役割が十分に果たせる者の任命について、市町村は、協議体とも連携しつつ、十分に検討していただきたいと考えている。
平成26年9月30日版Q&A(P22 問7)では、「市町村の職員とコーディネーターとの兼任について、市町村の職員の現在の仕事量を考えると、コーディネーターとの兼任は難しいため考えておらず、新たに人員を設置する」ということでした。
そのため今回のQ&Aでは、「市職員としての業務とコーディネーターとしての業務両立することが出来るものがいた場合は、この限りではない」としたと考えられる。
A2 事業実施2年目については、現在検討中であるが、できる限り2年目の間に協議体の設置及びコーディネーターの配置をしていただくことを想定しており、2年目の年度当初に必要な予算の確保や要綱の制定等は行っていただきたいと考えている。
A3 なお、協議体は、多様なサービス提供主体が参画した定期的な情報の共有・連携の強化の場であり、会議等の名称の如何を問わず、実質的に協議体の役割を果たすものであることが必要である。
介護保険法第11条の45第1項で、介護予防・日常生活支援総業事業は、平成27年4月1日から平成29年4月1日までの間に実施しなければならいないことになっています。
しかし、Q5でもありますように、コーディネーターや協議体を配置せず、ニーズの把握やサービスの開発に資する検討会を行っていれば、事業を開始しているものとみなす、としています。そして、事業実施2年目についても、できる限り実際のサービス提供開始していただきたい、と回答するに留まっています。
このことから、実際に介護予防・日常生活支援総業事業の核である、コーディネーターと協議体の設置は、平成30年4月1日以降になることも予想され、体制が整うまではまだ時間がかかりそうです。
A2 平成27年度以降については、地域支援事業の包括的支援事業として予算計上しているところであり、任意事業とは法律上の位置付けが異なるものである。(仮に、平成26年度に任意事業を活用していたとしても、地域支援事業の包括的支援事業としては制度改正後である平成27年度から事業を実施したこととなる。)
ここでは、介護予防・日常生活支援総業事業開始前でも、いち早くから生活支援の基盤整備に着手することを推奨していることが分かります。
A2 市町村の方針の例としては、ガイドライン案では平塚市を紹介しており、平塚市においては、市の総合計画に「地域福祉推進事業」として、町内福祉村を市内各地区(おおむね小学校区ごと)に設置し、住民の自主的、主体的な参加を基本に、行政、社会福祉協議会、地縁組織、市民活動団体等の関10係機関とパートナーシップを築き、相互に連携、協力しながら福祉活動を主体として、住民同士の支え合いを基本に、安心して心豊かに生活できる環境づくりに取り組むこととしており、町内福祉村を設立するにあたり、説明会やチラシの配布等を通じて、地域住民の合意形成を図っている。
平成26年11月10日全国介護保険担当課長会議資料P287の「「コーディネーター」及び「協議体」設置・運営に係るフロー(例)」の市町村の欄とは次の表になります。
A2 一方、協議体については、地域で実際に活動する関係者が参画し、ニーズや課題を把握した上で、住民主体の通いの場の創設等実際の活動を身近な地域で生み出すことが重要であることから、例えば、市町村圏域や日常生活圏域ごとに設置することなどが想定されるが、予算の範囲内において市町村の裁量で柔軟な設置をすることを妨げるものではない。
A2の回答から協議体は、協議体の設置は、各地域(日常生活圏域)ごとではなく、コーディネーターの配置人数と同様に「限定しない」と解釈で正しいと考えられます。
以上が平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aのうち、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」についてのQ&Aでした。
次回は、(3)「サービス利用の流れ」についてのQ&Aについて考察させていただきます。