ほっと・ケアライフ通信
第8回 総合事業Q&A2015.1発表分(1)
今回のほっと・ケアライフ通信では、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aが、厚生労働省老健局振興課により発表されましたので、このQ&Aについて考察していきます。
介護予防・日常生活支援総業事業とは、サービス提供対象者である、要支援者と二次予防事業対象者(要支援・要介護になるリスクが高い高齢者)に,介護予防や配食・見守り等の生活支援サービスなど地域で高齢者を支える多様なサービスを,市町村の判断と創意工夫により総合的に提供できる事業です。
平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aは、(1)「総合事業に関する総則的な事項」について、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」について、(3)「サービス利用の流れ」について、(4)「総合事業の制度的な枠組み」について、(5)「その他」について、の5つに分かれています。今回のほっと・ケアライフ通信では、(1)「総合事業に関する総則的な事項」について考察していきます。
「総合事業に関する総則的な事項」については、次の4つの質問についての回答が発表されました。
「通所介護サービスは集団で受けるサービスだが、訪問介護サービスは個人個人で受けるサービスなので、要支援者と要介護者が混在することはない。そのため、要介護者の住民主体による訪問介護サービスを受けることはできない、という解釈でいいか」という内容の質問になるかと思います。
そもそも介護予防・日常生活支援総業事業化により解決したい大きな問題の1つに、「現在の体制では二次予防者事業対象者(要支援・要介護になるリスクが高い高齢者)へのサービスの量種類が少ない。そのため、要支援者又は要介護者から二次予防者事業対象者へ順調に回復しても、二次予防者事業対象者になったとたんに、受けられるサービスが激減するため、再度悪化してしまう事が多い」という問題があります。介護予防・日常生活支援総業事業化により、現在の介護予防訪問介護と二次予防者事業のサービスが連携をとれていれば、このような問題は解消されるとしています。
このような背景から、要介護者がサービスを受けることによって増える間接経費等をサービスの主体が補助すれば、要介護者も住民主体の訪問介護サービスを受けられることと回答したものと考えられます。
A 「その他の生活支援サービス」については、「訪問型サービスや通所型サービスと一体的に行われる場合に効果があると認められるもの」(介護保険法第115条の45第1項ハ)とされているが、これは要支援者等の個人に着目したものではなく、市町村の事業実施という観点から整理されているものであり、訪問型サービスや通所型サービスと一体的に実施する場合に効果があると認められる「その他の生活支援サービス」を市町村が事業として展開することが想定されている。このため市町村が、例えば、配食等の「その他の生活支援サービス」を事業展開している場合には、地域包括支援センター等のケアマネジメントを通じ、要支援者等に対して、その状態等を踏まえ「その他の生活支援サービス」のみが提供される場合はあり得ると考えている。
厚生労働省令では、総合事業により実施できる「その他支援サービス」は以下の3つに規定されることが予定されている。
① 配食:栄養改善を目的とした配食や一人暮らし高齢者に対する見守りとともに行う配食など
② 定期的な安否確認及び緊急時の対応(以下「見守り」という。):住民ボランティアなどが行う訪問による見守り
③ その他、訪問型サービス、通所型サービスに準じる生活支援であって、地域における自立した日常生活の支援に資するサービスとして市町村が定める生活支援(訪問型サービス及び通所型サービスの一体的提供等)
上記①以外にも②のサービスは、単体でのサービスでも十分な効果が期待できるため、「その他の生活支援サービス」として単体での利用も可能かと考えられます。
2 また、二次予防事業を実施せずに、一次予防事業のみに専念することも可能であり、実施要綱上も明確化する予定である。
この質問について考察していく前に、一次予防事業(第1号被保険者全員及びその支援のための活動に関わるものを対象)と二次予防事業(要支援・要介護になるリスクが高い高齢者を対象)の事業内容と目的についてご説明させていただきます。
・一次予防事業
一次予防事業は、活動的な健康状態の高齢者を中心に、生活機能の維持・向上に向けた取り組みを行うことを目的としています。特に高齢者の精神・身体・社会の各相における活動性を維持・向上させることが重要視されています。
分類 | 事業内容 |
地域介護予防活動事業 | ・介護予防のための地域活動 ・地域活動をする団体の支援・育成 ・ボランティア等の人材育成のための研修 ・二次予防修了者への活動の場の提供 |
介護予防普及啓発事業 | ・基本的知識に関する ・有識者等による講演会、相談会を開催 ・運動教室等の介護予防教室等を開催する ・各対象者の介護予防の実施を記録する媒体を配布する |
一次予防事業評価事業 | ・介護保険事業計画で定めた目標値の達成状況を検証する ・評価結果に基づいて事業の実施等を改善する |
・二次予防事業
二次予防事業は、要支援・要介護状態に陥るリスクが高い高齢者を早期発見し、早期に対応することにより状態を改善し、要支援状態になることを遅らせることを目的としています。
分類 | 事業内容 |
対象者把握事業 | ・基本チェックリストを実施して二次予防事業の対象者を決定する。 ・必要に応じて検査等を行う |
通所介護型予防事業 | ・対象者の通所により、介護予防に資するプログラムを実施し、自立した生活の確立と自己実現の支援を行う |
訪問型介護予防事業 | ・保健師、歯科衛生士等が対象者の居宅を訪問して、生活機能に関する問題を総合的に把握及び評価し、その上で必要な相談及び指導ほか必要なプログラムを行う。通所型介護予防事業につなげていく |
二次予防事業評価事業 | ・介護保険事業計画で定めた目標値の達成状況等を確認する ・評価結果に基づいて事業の実施方法等を改善する |
一次予防事業の全ての事業と二次予防事業のうち「対象者把握事業・二次予防事業評価事業」が一般介護予防事業に、二次予防事業のうち「通所介護型予防事業・訪問型介護予防事業」が介護予防・生活支援サービス事業に移行するのが、今回の介護予防・日常生活支援総業事業となります。このうち一般予防事業については、地域の実情に応じた効率的・効果的な介護予防を行うために、一次予防事業と二次予防事業を区別しないこととされていますが、介護予防・生活支援サービス事業では一次予防事業と二次予防事業が区別されています。
今回の介護予防・日常生活支援総業事業では、「介護予防は、高齢者が自ら進んで事業や介護予防の活動に参加し、自分らしい生活を維持できるようにすること」を目的としており、そのためには、高齢者が日常生活の中で気軽に参加できる活動の場が身近にあり、地域の人を通して活動が広がるような地域コミュニティが重要である、とされています。
これらのことから今回の介護予防・日常生活支援総業事業は、一次予防事業を強化したものになると考えられ、介護予防・生活支援サービス事業でも一次予防事業を中心に行うべきだと回答したものと推測されます。
2 このため、基本チェックリストの配布・回収に頼るのではなく、庁内の関係部局や地域包括支援センター等が把握している情報を整理するところから検討を進め、一般介護予防事業に位置づけられる住民主体の介護予防活動へとつなげられるように、地域の実情に応じた効果的かつ効率的な手法へと見直しを図っていただきたい。なお、専門職による個別判断の結果、ガイドライン案の「第4サービスの利用の流れ」を踏まえて、介護予防・生活支援サービス事業へつなげることを妨げるものではない。
3 また、これまで二次予防事業に位置づけてきた通所型介護予防事業及び訪問型介護予防事業については、地域の有効な資源として捉え、介護予防・生活支援サービス事業の通所型サービスC及び訪問型サービスCに位置づけて活用することも可能であるが、これまでの二次予防事業対象者とは異なり、介護予防・生活支援サービス事業対象者は何らかの支援を必要として窓口に来た者であることから、アセスメント訪問を組み合わせて日常生活の課題を明確化した上で、短期集中の個別性のある通所プログラムを提供できるように、事業内容を改善する必要がある。
4 一方で、専門職による地域に根ざした活動を推進し、従来の二次予防事業対象者であっても、介護予防・生活支援サービス事業対象者であっても、要支援者であっても、要介護者であっても一緒に参加することのできる住民主体の介護予防活動の地域展開を目指すことが重要であることから、数に限りある専門職を効果的かつ効率的に活かせるように、地域全体のバランスを考えて検討していただきたい。
この1~4の回答を見ると、1が二次予防事業の問題点で、2~4が1に対する対策となっています。そして2~4の回答は、高齢者が気軽に介護予防活動に参加できる地域づくりをするための方法が中心となっています。つまり、二次予防事業がうまくいかないのは、一次予防事業がしっかりと出来てないことが原因とされ、二次予防事業よりも一次予防事業の活動が優先されることが推測されます。
以上が平成27年1月に発表された、「介護予防・日常生活支援総業事業のガイドライン案」についてのQ&Aのうち、(1)「総合事業に関する総則的な事項」についてのQ&Aでした。
次回は、(2)「生活支援・介護予防サービスの充実」についてのQ&Aについて考察させていただきます。