ほっと・ケアライフ通信
第7回 通所介護改正2015.2発表分
介護保険制度では、3年ごとに介護保険事業計画を作成することとされています。平成27年は、この3年目にあたり、計画に基づき介護保険報酬についても改正される予定です。今回のほっと・ケアライフ通信では、厚生労働省が平成27年2月9日に公表した平成27年度介護報酬改定の概要(案)のうち、通所介護について考察したいと思います。
前回の議会(平成26年11月)に発表された、平成27年度介護報酬改定の概要(案)の訪問介護については、平成27年1月19日のほっとケアライフ通信第3回に掲載されています。
前回の議会では通所介護について、(1)重度の介護利用者や認知症の方への対応、(2)人員配置基準の要件緩和、(3)基本報酬の見直しについて、(4)看護師の配置基準について、(5)地域密着型通所介護の創設について、(6)小規模通所介護のサテライト事業所への移行、(7)予防給付が事業化することに伴う人員・配置基準、(8)宿泊サービスについて、(9)送迎を行わない場合の評価の見直し、(10)送迎時に行った介護サービスについて、(11)延長加算の算定要件の見直しについての11の論点で議論されました。
今回の議会では、訪問介護の基本報酬や上記の(1)~(8)について話し合いが持たれました。
- 基本報酬
通所介護の基本報酬については、変更の発表が一部ありました。
【例1】小規模型通所介護費の場合
(所要時間7時間以上9時間未満の場合)要介護1 815 単位/日 要介護1 735 単位/日(▲9.82%) 要介護2 958 単位/日 要介護2 868 単位/日(▲9.39%) 要介護3 1,108 単位/日 ⇒ 要介護3 1,006 単位/日(▲9.2%) 要介護4 1,257 単位/日 要介護4 1,144 単位/日(▲8.99%) 要介護5 1,405 単位/日 要介護5 1,281 単位/日(▲8.83%)
【例2】通常規模型通所介護費の場合
(所要時間7時間以上9時間未満の場合)要介護1 695 単位/日 要介護1 656 単位/日(▲5.61%) 要介護2 817 単位/日 要介護2 775 単位/日(▲5.14%) 要介護3 944 単位/日 ⇒ 要介護3 898 単位/日(▲4.87%) 要介護4 1,071 単位/日 要介護4 1,021 単位/日(▲4.67%) 要介護5 1,197 単位/日 要介護5 1,144 単位/日(▲4.43%)
【例3】大規模型通所介護費(Ⅰ)の場合
(所要時間7時間以上9時間未満の場合)要介護1 683 単位/日 要介護1 645 単位/日(▲5.56%) 要介護2 803 単位/日 要介護2 762 単位/日(▲5.14%) 要介護3 928 単位/日 ⇒ 要介護3 883 単位/日(▲4.85%) 要介護4 1,053 単位/日 要介護4 1,004 単位/日(▲4.65%) 要介護5 1,177 単位/日 要介護5 1,125 単位/日(▲4.42%)
【例4】大規模型通所介護費(Ⅱ)の場合
(所要時間7時間以上9時間未満の場合)要介護1 665 単位/日 要介護1 628 単位/日(▲5.56%) 要介護2 782 単位/日 要介護2 742 単位/日(▲5.12%) 要介護3 904 単位/日 ⇒ 要介護3 859 単位/日(▲4.98%) 要介護4 1,025 単位/日 要介護4 977 単位/日(▲4.68%) 要介護5 1,146 単位/日 要介護5 1,095 単位/日(▲4.45%) 所要時間7時間以上9時間未満の通所介護サービスについての単位の変更が発表されました。利用者の介護度が重くなればなるほど、基本報酬の減少の割合は少なくなっていること及び小規模型通所介護の基本報酬の減少の割合が、他の規模の通所介護と比較して2倍近くになっていることが分かります。
- 重度の介護利用者や認知症の方への対応
前回の議会では、重度の介護利用者や認知症の高齢者の方は、今後増え続けていくことが見込まれており、在宅生活を継続していくためには、通所介護(デイサービス)の存在は、非常に大きなものになっているため、重度の介護利用者や認知症の高齢者の在宅生活の継続のため必要な「認知症対応機能」、「重度者対応機能」、「心身機能訓練から生活行為力向上訓練まで総合的に行う機能」の充実と報酬上の評価について話し合いがされました。今回の議会では、認知症高齢者や中重度の要介護者を積極的に受け入れ、在宅生活の継続に資するサービスを提供するため、介護職員又は看護職員を指定基準よりも常勤換算方法で複数以上加配している事業所について、加算として評価することを明確にし、「認知所加算」と「中重度ケア体制加算」が新設されました。
「認知症加算」については、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の利用者に対して加算として評価し、「中重度者ケア体制加算」については、事業所の利用者全員に対して加算として評価します。
認知症加算(新規)⇒ 60単位/日
算定要件は以下の通りです。
a 指定基準に規定する介護職員又は看護職員の員数に加え、介護職員又は看護職員を常勤換算方法で2以上確保していること。
b 前年度又は算定日が属する月の前3月間の利用者の総数のうち、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の利用者の占める割合が100分の20以上であること。
c 指定通所介護を行う時間帯を通じて、専ら当該指定通所介護の提供に当たる認知症介護指導者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修等を修了した者を1以上確保していること。中重度者ケア体制加算(新規)⇒ 45単位/日
算定要件は以下の通りです。
a 指定基準に規定する介護職員又は看護職員の員数に加え、介護職員又は看護職員を常勤換算方法で2以上確保していること。
b 前年度又は算定日が属する月の前3月間の利用者の総数のうち、要介護3以上の利用者の占める割合が100分の30以上であること。
c 指定通所介護を行う時間帯を通じて、専ら当該指定通所介護の提供に当たる看護職員を1以上確保していること。「認知症加算」が、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の利用者に対して加算としているのに対し、「中重度者ケア体制加算」事業所の利用者全員に対して加算としているのはそれぞれの加算の算定要件cに差があり、「中重度者ケア体制加算」では看護職員の確保が必要だとされているためかと考えられます。
前回の議会で個別機能訓練加算については、個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の算定要件が曖昧であり、混同して使われていることが大きな問題として取り上げられましたが、今回の議会では、話し合いは見送られました。今回の議会では個別機能訓練加算(Ⅰ)と個別機能訓練加算(Ⅱ)の加算単位の変更と(Ⅰ)(Ⅱ)共通の算定要件の追加が発表されました。
個別機能訓練加算(Ⅰ)42単位/日 ⇒ 46単位/日
個別機能訓練加算(Ⅱ)50単位/日 ⇒ 56単位/日追加要件(個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)共通)は以下の1点です。
機能訓練指導員等が利用者の居宅を訪問した上で、個別機能訓練計画を作成し、その後3月ごとに1回以上、利用者の居宅を訪問した上で、利用者又はその家族に対して、機能訓練の内容と個別機能訓練計画の進捗状況等を説明し、訓練内容の見直し等を行っていること。
- 人員配置基準の要件の緩和
前回の議会では、①通所介護と「現行の通所介護相当のサービス」を一体的に運営する場合は、現行の介護予防通所介護に準ずるものとする、②通所介護と「通所型Aサービス(緩和した基準によるサービス)」を一体的に運営する場合は、従業者が専従要件を満たしているとみなし、要介護者数だけで介護給付基準を満たし、要支援者には必要数とする、ことが案として出されました。今回の議会で、利用者の地域での暮らしを支えるため、医療機関や他の介護事業所、地域の住民活動等と連携し、通所介護事業所を利用しない日でも利用者を支える地域連携の拠点としての機能を展開できるよう、生活相談員の専従要件を緩和し、事業所内に限った利用者との対話を主体とした相談業務のみならず、サービス担当者会議に加えて地域ケア会議への出席などが可能となりました。
- 看護職員の配置基準の緩和
今回の議会で、地域で不足している看護職員については、その専門性を効果的に活かすことができるよう、前回の会議で提案された通り、病院、診療所、訪問看護ステーションと連携し、健康状態の確認を行った場合には、人員配置基準を満たしたものとされました。 - 地域密着型通所介護の創設
前回の議会では、①基本報酬については、小規模通所介護の基本報酬を踏襲する、②新たに運営推進会議(事業者が提供しているサービス内容を明らかにする会議)の設置、③地域密着型通所介護の運営推進会議は、半年に1回以上とする、ことが案として出されました。今回の議会では、平成28年度に地域密着型通所介護が創設されることに伴い、地域との連携や運営の透明性を確保するための運営推進会議の設置など、新たに基準を設けるとともに、基本報酬の設定については、上述1における見直し後の小規模型通所介護の基本報酬を踏襲するとしています。
- 小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所への移行
(1)前回の議会では、小規模多機能型居宅介護への移行について、①宿泊施設等の設置には、一定の経過措置(平成29年度末まで)を設ける、②経過措置期間内に、小規模通所介護としての人員配置で運営を行う場合は、小規模多機能型居宅介護の基本報酬に人員基準欠如減算(70/100)を適用する、③指定申請の際には、サテライト事業所の整備計画を策定し、市町村に提出する、ことが案として出されました。今回の議会では、小規模な通所介護事業所が小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所に移行する際に、小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所としての基準について、平成29年度末までの経過措置を設ける。また、経過措置期間内において、小規模多機能型居宅介護のサテライト型事業所としての人員配置基準を満たさない場合には、小規模多機能型居宅介護の基本報酬を減算(70/100)することが決められました。
(2)通所介護(大規模型・通常規模型)のサテライト事業所への移行
前回の議会では、大規模・通常規模通所介護のサテライト事業への移行について、①サテライト事業所については、一体的なサービス提供の単位として、本体事業所に含めて指定する、②同一法人のサテライト事業となる場合のみ移行が可能である、ことが案として出されました。今回の議会では、小規模な通所介護事業所が通所介護(大規模型・通常規模型)事業所のサテライト事業所へ移行するに当たっては、一体的なサービス提供の単位として本体事業所に含めて指定するなど、現行のサテライト事業所の取扱いに従って実施することが決められました。
- 通所介護と新総合事業における通所事業を一体的に実施する場合の人員等の基準上取扱い
前回の議会では、①通所介護と「現行の通所介護相当のサービス」を一体的に運営する場合は、現行の介護予防通所介護に準ずるものとする、②通所介護と「通所型Aサービス(緩和した基準によるサービス)」を一体的に運営する場合は、従業者が専従要件を満たしているとみなし、要介護者数だけで介護給付基準を満たし、要支援者には必要数とする、ことが案として出されました。
今回の議会では、通所介護事業者が、通所介護及び新総合事業における第一号通所事業を、同一の事業所において、一体的に実施する場合の人員、設備及び運営の基準については、通所介護及び介護予防通所介護を一体的に実施する場合の現行の基準に準ずるものとすることが決められました。
ここでいう、第一号通所介護事業とは「現行の予防通所介護介護相当のサービス」と、「緩和した基準によるサービス」になります。
- 夜間及び深夜のサービスを実施する場合の運営基準の厳格化
前回の議会では、①宿泊サービスの提供日数にかかわらず、宿泊サービスを提供する場合、事業所の基本的事項等について、指定権者への届出を義務付けること、②宿泊サービスの提供により事故が発生した場合には、通所介護と同様の対応(市町村・利用者家族・居宅介護支援事業者等への連絡、損害賠償の設置等)を義務付ける、③介護サービス情報公表制度を活用し、通所介護事業所の基本情報に宿泊サービスの情報(指定権者へ届け出る事業所の基本的事項等と同内容)を加え、利用者や介護支援専門員に適切に情報が提供される仕組みとする、ことが対応案として出された(認知症対応型通所介護の設備を利用して宿泊サービスを実施している場合も同様の対応)が案としてだされました。今回の議会では、通所介護事業所の設備を利用して、介護保険制度外の夜間及び深夜のサービス(宿泊サービス)を実施している事業所については、届出を求めることとし、事故報告の仕組みを設けるとともに、情報公表を推進することが決められました。
以上の8点が、厚生労働省が平成27年2月9日に公表した平成27年度介護報酬改定の概要(案)のうち、訪問介護についてになります。