ほっと・ケアライフ通信
第6回 訪問介護改正2015.2発表分
介護保険制度では、3年ごとに介護保険事業計画を作成することとされています。平成27年は、この3年目にあたり、計画に基づき介護保険報酬についても改正される予定です。今回のほっと・ケアライフ通信では、厚生労働省が平成27年2月9日に公表した平成27年度介護報酬改定の概要(案)のうち、訪問介護について考察したいと思います。
前回の議会(平成26年11月)に発表された、平成27年度介護報酬改定の概要(案)の訪問介護については、平成27年1月14日のほっとケアライフ通信第2回に掲載されています。
前回の議会では訪問介護について、(1)20分未満の身体介護について、(2)サービス提供責任者の配置等の見直しについて、(3)訪問介護員2級課程修了者(ヘルパー2級)であるサービス提供責任者に係る減算の取り扱いについて、(4)生活機能向上連携加算の見直しについて、(5)新しい総合事業に対する対応について、の5つの論点で話し合いが行われました。
今回の議会では、訪問介護の基本報酬や上記の(1)~(6)について話し合いが持たれました。
- 訪問介護の基本報酬
訪問介護の基本報酬については、変更の発表が一部ありました。
① 身体介護が中心の場合 所要時間20分未満 171単位⇒165単位 (▲3.51%) 所要時間20分以上30分未満 255単位⇒245単位 (▲3.92%) 所要時間30分以上1時間未満 404単位⇒388単位 (▲3.96%) ② 生活援助 所要時間20分以上45分未満 191単位⇒183単位 (▲4.19%) 所要時間45分以上 404単位⇒388単位 (▲4.66%) ③ 通院等乗降介助 101単位⇒97単位 (▲3.96%) 上記のとおり6つの介護サービスについての単位の変更が発表されました。その他についても単位数が3%後半から4%中盤ぐらいの減少が見込まれます。身体介護と生活援助を比較すると生活援助の方が減少の割合が高いので、生活援助が係るものは減少の割合が高くなることが考えられます。
- 20分未満の身体介護の見直し
前回の議会では、20分未満の身体介護について、①他の身体介護と比べ1分当たりの点数が高いこと、②夜間や早朝に20分未満の身体介護を行う場合、算定要件が著しく緩くなること、③20分未満の身体介護の多くが有料老人ホームとサービス付高齢者向け住宅で利用されていること、が問題として話し合われていました。そして、今回の議会では上記の①~②の論点について具体的な内容が決まりました。③の論点については、今回の議論の対象にはなりませんでした。①の問題については、上述の1.訪問介護の基本報酬で記したとおりの変更になります。他の身体介護サービスと比べ減少の割合が低いため、20分未満の身体介護の必要性は変わらないとしていることが分かります。しかし、現在の急激な利用増加を抑えるため、算定要件で過剰な利用の制限を図ろうとしていることが考えられます。
②の問題については、次のような変更が決められました。
現行の算定要件
変更後の算定要件
変更内容といたしましては、a 夜間・早朝と日中の算定要件が統一されたこと、b 利用者の範囲が広がったこと、c 体制の変更 d 利用限度額が定められたこと、の4点になります。
b 利用者の範囲の拡大については、新たに要介護1,2かつ認知症の方が対象となります。しかし、この場合20分未満の身体介護のサービスを提供できるのは、定期巡回・随時対応サービスの指定を受けている事業所のみになります。
c 体制の変更については、「毎日、午前6時から午後10時までを営業時間としている事業所に限る」という要件が削除されました。
d 利用限度額の制定については、前回の議会通り、定期巡回・随時対応型訪問看護費(Ⅰ)(訪問看護サービスを行わない場合)の範囲内となります。つまり、要介護1なら6,707点の、要介護2なら11,182点の範囲内で20分未満の身体介護を利用しなければならないことになります。
- サービス提供責任者の配置等の見直し
前回の議会では、在宅中重度介護利用者への対応の強化のために、サービス提供責任者の配置等についての議論も行われ、①中重度の要介護者を重点的に受け入れており、一定の人員基準を上回る常勤のサービス提供責任者を配置する事業所については、特定事業加算による加算を算定すること、②複数のサービス提供責任者が共同して利用者に係る体制や、利用者情報の共有などサービス提供責任者が行う業務について効率化が定められている場合には、サービス提供責任者の配置基準を「利用者50人に対して1人以上」に緩和する(現行では40人に1人以上)ことが提案されました。①について今回の議会では、特定事業加算(Ⅳ)が新設されそれが適用されることが発表されました。加算単位数は、所定単位数の100分の5に相当する単位数になる予定です。算定要件は次の3つが発表されています。a 人員基準に基づき配置しなければならない常勤のサービス提供責任者を配置していること(利用者が80人未満の事業所に限る)、b サービス提供責任者全員に、サービス提供者業務の質の向上に資する個別研修計画が策定され、研修が実施又は予定であること、c 利用者総数のうち、要介護3以上、認知症自立度Ⅲ以上の利用者が60%以上であること、の3つの要件になります。
②について今回の議会では、前回に引き続き一定の要件を満たせばサービス提供責任者の配置基準を「利用者50人に対して1人以上」とし、具体的な要件を3つ発表しました。
具体的な3つの要件とは、a 常勤のサービス提供責任者が3人以上、b サービス提供責任者の業務に主として従事する者が1人以上配置されている事業所について、複数のサービス提供責任者が共同して利用者に関わる体制が構築されていること、c 利用者情報の共有などサービス提供責任者が行う業務の効率化が図られていること、以上の3つになります - 訪問介護員2級課程修了者であるサービス提供責任者に係る減算の取り扱いについて
この問題については、前回の議会で出た案通り所定単位数を70%に減算することが発表され、救済措置も発表されました。救済措置は、「減算が適用される訪問介護事業所が、人員基準を満たす他の訪問介護事業所と統合し、出張所となるものとして、平成27年度末までに都道府県知事に届け出た場合については、平成29年度末までの間、減算適用事業所を統合する訪問介護事業所全体については、当該減算を適用しない。」としています。 - 生活機能向上連携加算の見直しについて
生活機能向上連携加算については、前回の議会どおり要件の緩和が議論され、今回の議会で3つの要件が発表されました。a サービス提供責任者が、指定訪問リハビリテーション事業所又は指定通所リハビリテーション事業所の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士(以下「理学療法士等」という。)による指定訪問リハビリテーション又は指定通所リハビリテーションの一環として利用者の自宅を訪問する際にサービス提供責任者が同行する等により、当該理学療法士等と共同して行ったアセスメント(利用者が何を求めているか知る事)結果に基づき訪問介護計画を作成していること。
b 当該理学療法士等と連携して訪問介護計画に基づくサービスを提供していること。
c 当該計画に基づく初回の当該指定訪問介護が行われてから3か月間算定できること。
現行の算定要件では、「理学療法士等に同行し、利用者の身体の状況を考慮して、サービス提供責任者は訪問介護計画を策定し、生活機能の向上を目的とした訪問介護計画を作成した場合」が算定要件でした。aとbの変更により、理学療法士等に同行し、アセスメントの結果に基づく当該理学療法士と連携した訪問介護計画を作成していれば、算定可能となりました。
現行では、当該計画に基づく初回の当該指定訪問介護が行われてから3か月間のうち1か月しか算定できませんでしたが、cの変更により3か月間全部算定することが可能になりました。
- 新しい総合事業に対する対応
今回の議会では、訪問介護事業者が、訪問介護及び新総合事業における第一号訪問事業を、同一の事業所において、一体的に実施する場合の人員、設備及び運営の基準については、訪問介護及び介護予防訪問介護を一体的に実施する場合の現行の基準に準ずるものとする、ことが発表されました。
ここでいう、第一号訪問事業とは「現行の予防訪問介護介護相当のサービス」と、「緩和した基準によるサービス」になります。
以上の5点が、厚生労働省が平成27年2月9日に公表した平成27年度介護報酬改定の概要(案)のうち、訪問介護についてになります。