ほっと・ケアライフ通信
第4回 平成27年の介護報酬改定等についての議案(通所介護編)「後編」
前編に引き続きまして後編では、残りの論点2~論点11をご紹介させていただきます。
論点2 人員配置基準の要件の緩和
利用者の地域での暮らしを支えるためには、医療機関や他の介護事業所、地域の住民 活動等と連携して、通所介護を利用しない日でも利用者を支える、地域連携の拠点としての機能の展開についても、次の①、②の論点について今回の議会で議論されました。
① 生活相談員は通所介護のサービス提供時間中、事業所内にいなければならないため、通所介護を利用しない日の利用者の生活相談をすることが出来ないこと。
② 生活相談員は通所介護のサービス提供時間中、事業所内にいなければならないため、効率性の観点から利用者のケア、見守りや安全確認を行うことが多く、本来の業務である相談・調整業務に割ける時間が少なくなっている事
以上2つの問題に対して議会では、生活相談員の専従要件を緩和し、事業所内に限った生活相談業務だけではなく、利用者の生活全般を支える取組については事業所外の業務であっても、生活相談員として通所介護を提供しているものとみなし、地域連携の拠点としての展開を推進する、との対応案を出しました。
論点3 基本報酬の見直しについて
現行の制度において通所介護の基本報酬は、前年度の1月当たりの平均利用延人員数により事業所規模別になっている。しかし、利用者の数が月300人以下の小規模通所介護が有利な基本報酬設定になっており、小規模通所介護が増えすぎていることもあることから、基本報酬を実態に応じたものにすることについて、今回の議会で議論されました。
前回の平成24年の改定で、小規模通所介護の基本報酬が、他の規模の通所介護よりも、 有利になったかというと、小規模通所介護は他の規模の通所介護より、スケールメリットが少なく、管理的経費が高いことなどが考慮されたためです。平成23年の調査では、小規模通所介護のサービス提供1回の管理的経費額は、通常規模通所介護と比べて、約15%高いという結果がでました。
しかし、平成27年の調査では、小規模通所介護のフランチャイズ化や経営の洗練化により、小規模通所介護の管理的経費額は、通常規模通所介護よりも7.6%高いという結果が出ました。仮に来年の改正で小規模通所介護の基本報酬が、通常規模の通所介護の基本報酬よりも、8%高い報酬に改正されたとします。そうすると、小規模通所介護事業所が5時間以上7時間未満のサービス提供の場合の基本報酬は、要介護1で654点、要介護2で770点、要介護3で885点、要介護4で1,001点、要介護5で1,116点となってしまいます。つまり、介護1で51点、要介護2で61点、要介護3で72点、要介護4で81点、要介護5で92点の減収となります。例えば、要介護3の人が月延べ人数200人利用している小規模通所事業所は、14,400点の減収、つまり、毎月144,000円以上の減収になります。
論点4 看護師の配置基準
今回の議会では、現在看護師が、各地域で不足しており、人員を配置することが難しくなっていることについても議論がされました。
この問題に対して議会では、看護職員については、病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により、健康状態の確認を行った場合には、人員基準を満たしたものとする、という案が出されました。
論点5 地域密着型通所介護の創設
平成27年の改正により、小規模通所介護は、(1)大規模又は通常規模の通所介護事業所のサテライト型事業所、(2)地域密着型通所介護、(3)小規模多機能型居宅介護のサテライト事業化のいずれかに移行することになります。論点5では、(2)の地域密着型通所介護についての考察になります。
地域密着型サービス(地域密着型通所介護含む)とは、高齢者が身近な地域での生活を継続できるようにすることを目的としています。基本的な仕組みは、①市町村が事業者の指導・監督を行う、②事業所のある市町村の被保険者だけがサービスを利用できる(市町村の指定があれば市町村外でも利用可能)、③市町村が事業所の数量を決めることができる、④事業所が計画していた量を超える場合は、市町村は事業所の指定を拒否できる、⑤市町村は、地域の実情に応じた基準や介護報酬をつくることが出来る、というものです。
今回の議会では、平成28年4月1日から地域密着型通所介護が創設されることに伴い、新たに報酬や基準省令を創設することが必要とされており、議論されました。
これに対して議会では、①基本報酬については、小規模通所介護の基本報酬を踏襲する、②新たに運営推進会議(事業者が提供しているサービス内容を明らかにする会議)の設置、③地域密着型通所介護の運営推進会議は、半年に1回以上とする、ことが案として出されました。
論点 6 小規模通所介護のサテライト事業所への移行
論点5でもご紹介したとおり、小規模通所介護は、大規模・通常規模通所介護又は小規模多機能型居宅介護のサテライト事業所に移行することもできます。論点6では、小規模通所介護のサテライト事業所への移行について、今回議論されたものをご紹介します。
まず、小規模多機能型居宅介護のサテライト事業所への移行について議論されたことをご紹介します。
小規模多機能型居宅介護とは、厚生労働省によると『利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行う』サービスの事です。具体的には、「通所介護」と「訪問介護」と「ショートステイ」の三つを併せたサービスになります。
小規模通所介護を小規模多機能型居宅介護のサテライト事業へ移行するのに大きな問題となるのは、ショートステイの機能を備えるための「宿泊設備」の設置と、3つのサービスを行うため人員基準が小規模通所介護より厳しいことがと考えられます。
そこで議会では、小規模多機能型居宅介護への移行について、①宿泊施設等の設置には、一定の経過措置(平成29年度末まで)を設ける、②経過措置期間内に、小規模通所介護としての人員配置で運営を行う場合は、小規模多機能型居宅介護の基本報酬に人員基準欠如減算(70/100)を適用する、③指定申請の際には、サテライト事業所の整備計画を策定し、市町村に提出する、ことが案として出されました。
次は、「大規模・通常規模通所介護のサテライト事業所への移行」について議論されたことをご紹介させていただきます。
大規模・通常規模通所介護のサテライト事業への移行について、今回の議会では、①サテライト事業所については、一体的なサービス提供の単位として、本体事業所に含めて指定する、②同一法人のサテライト事業となる場合のみ移行が可能である、ことが案として出されました。
論点7 予防給付が事業化することに伴う人員・設置基準
今回の議会では、通所介護事業者が、「通所介護」と「介護予防・日常生活支援総合事業における通所介護」を、同一の事業所において、一体的に運営する場合の人員・設備の取り扱いについても議論されました。
今回の介護予防・日常生活支援総合事業化により、介護予防通所介護のサービスは次のように分類されます。
この議題について議会では、①通所介護と「現行の通所介護相当のサービス」を一体的に運営する場合は、現行の介護予防通所介護に準ずるものとする、②通所介護と「通所型Aサービス(緩和した基準によるサービス)」を一体的に運営する場合は、従業者が専従要件を満たしているとみなし、要介護者数だけで介護給付基準を満たし、要支援者には必要数とする、ことが案として出されました。
具体的には、次の表のとおりになります。
論点8 宿泊サービスについて
今回の議会では、通所介護事業所の設備で宿泊サービスを利用している、利用者の方の保護についても議論がされました。
この問題について今回の議会では、①宿泊サービスの提供日数にかかわらず、宿泊サービスを提供する場合、事業所の基本的事項等について、指定権者への届出を義務付けること、②宿泊サービスの提供により事故が発生した場合には、通所介護と同様の対応(市町村・利用者家族・居宅介護支援事業者等への連絡、損害賠償の設置等)を義務付ける、③介護サービス情報公表制度を活用し、通所介護事業所の基本情報に宿泊サービスの情報(指定権者へ届け出る事業所の基本的事項等と同内容)を加え、利用者や介護支援専門員に適切に情報が提供される仕組みとする、ことが対応案として出された(認知症対応型通所介護の設備を利用して宿泊サービスを実施している場合も同様の対応)。
論点 9 送迎を行わない場合の評価の見直し
この論点9~論点11は通所系サービス(通所介護、通所リハビリテーション、認知症対応型通所介護)共通の論点になります。
論点9では、通所系サービスに通う利用者を、通所系サービスの事業者が送迎を行っていない場合の、評価方法の見直しについてご紹介します。この問題に対して議会では、通所介護サービスの報酬には、送迎サービスの評価も含まれているので、減算の対象とすることが提案されました。これには、通所介護サービスと同一の建物から通う利用者も含みます。
論点10 送迎時に行った介護サービスについて
今回の議題では、送迎時に行った居宅内介助等を、行った時の評価についても議論された。
これの議題に対し議会では、①送迎時に行った居宅内介助等(電気の消灯・点灯、着替え、ベッドへの移乗、窓の施錠等)を通所介護の所要時間に含めること、②所要時間に含めることが出来る時間は、居宅内介助等の所要時間が過剰にならないように、30分以内とするとともに、ケアプランと通所介護計画に位置付けたうえで実施すること、③①のサービスは、一定の有資格者が行うこととする、ことが案として出されました。
論点11 延長加算の算定要件の見直しについて
最後の論点は、「延長加算の算定要件の見直し」についてのご紹介になります。
今回の議会では現行の規定では、所要時間7時間以上9時間未満の通所介護の提供後から、自主事業の宿泊サービス実施前までの間に、日常生活上の世話を行った場合の延長加算になることについて、議論されました。
この論点に対して議会では、①通所介護の延長加算は、実態として通所介護の設備を利用して宿泊する場合は、算定不可とすること、②介護者のさらなる負担軽減や、仕事と介護の両立のため、更に延長加算を強化する、ことが案として出されました。
この案からレスパイトケアの必要性は依然認めるが、宿泊サービスの届出制が提案されたことからも、利用者保護の観点から上記①の案が提案されていると考えられます。