ほっと・ケアライフ通信
第1回 平成27年度に改正される介護保険事業計画の動向について
今回のほっと・ケアライフ通信では、平成27年度に改正される介護保険事業計画の動向について、居宅介護関係をピックアップしてご紹介させていただきます。
介護保険制度では、3年ごとに介護保険事業計画を作成することとされています。平成27年は、この3年目にあたり、計画に基づき介護保険報酬についても改正される予定です。以下に厚生労働省が公表した平成27年の介護報酬改定等についての議会(居宅介護関係等)が平成26年の11月に行われましたので、その議会について考察したいと思います。
このたびの議会では、利用者の自立を支援するケアマネジメントの推進とともに、地域包括支援システムを実現していく中で、住まい・医療・介護・予防・生活支援それぞれのサービス同士の連携の推進をするため、(1)介護支援専門員自身の資質向上、(2) 利用者の自立を支援するケアマネジメントの作成をやりやすくするために6つの論点について案を出すというものでした。以下ではその6つの論点についてご紹介をさせて頂きます。
論点1 福祉用具貸与のみのケアプランについて
福祉用具貸与のみのケアプランについては、訪問介護と通所介護を組み合わせて利用するように、介護保険サービスを複数利用する者に比べ、業務量が少ない事が論点となっています。三菱総合研究所の調査では福祉用具貸与のみのケアプランの場合は1月あたりの業務量が264.9分であるのに対し、複数の介護保険サービスのケアプランの場合は、1月あたりの業務量が303.4分という調査結果が出ています。
上記のグラフから、福祉用具貸与は全ケアプランの約50%に組み込まれていること、福祉用具貸与のみのケアプランはケアプラン全体の約3%あること、福祉用具貸与のみのケアプランについては、要支援1~要介護2の利用者が約90%であることがわかります。
福祉用具貸与についてのケアプラン作成について、議会では、①福祉用具貸与のみのケアプランについては、業務負担が少ない事を踏まえ基本報酬の評価を適正にする、②報酬基準上の利用者の算定について、2分の1を乗じた数を加えることとする。
上記①では三菱総合研究所の調査を基に計算すると1割以上基本報酬が減ることが予想されます。上記②では2人福祉用具貸与のみのケアプランを作成すると、報酬基準上の利用者数の算定では、1人とカウントされることが予想されます。
論点2 認知症加算と独居高齢加算を基本報酬に
ケアマネジメントした際の、認知症加算と独居高齢者加算の取得率はそれぞれ、認知症加算が85.47%、独居高齢者加算は78.53%となっております。
これらの加算状況からも、認知症の方と独居高齢者の方についてのケアマネジメントは、個人の心身の状況や家族の状況等に応じたケアマネジメントであり、ケアマネージャーの本来の業務であることから、加算算定ではなくて基本報酬に包括して評価を見直すことが提案されました。 基本報酬に含まれることによって、加算を受けていた事業所は、認知症加算と独居高齢加算の点数である1人当たり月150点の点数が、減ることも考えられます。
論点3 事業所の公平・中立性の確保の推進について
現在では、正当な理由のない特定の事業所(訪問介護、通所介護、福祉用具貸与)へのサービスの割合が90%以上である場合は、減算が適用されています。しかし、今回の議会では、更なる公平・中立性の推進のために、①90%以上という規定を更に引き下げること、②適用範囲は現在の訪問介護、通所介護、福祉用具貸与のみの対象から、全てのケアマネジメントの対象となるサービスまで適用範囲を広げることが提案されました。
上記のグラフから、①が実現されて特定の事業所へのサービスの割合が80%まで引き下げられた場合には、訪問介護では更に8.9%の事業所、通所介護では更に5.5%の事業所、福祉用具貸与では更に4.5%の事業所が減算対象となることも考えられます。
②については実現すると、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護(利用期間を定めて行うもののみ。)、福祉用具貸与、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護(利用期間を定めて行うもののみ。)、地域密着型特定施設入居者生活介護(利用期間を定めて行うもののみ)が新たに対象になります。
論点4 特定事業所加算の算定要件の見直しについて
特定事業所加算とは、質の高いケアマネジメントを実施している事業所を評価する点数加算であり、人員要件、利用者の介護度割合や運営基準などが算定要件に挙げられているものです。
今回の議会では更に質の高いケアネジメントの推進と実態に即した評価を行うため、①主任介護支援専門員の人員配置の強化、②中重度(要介護3~要介護5)の占める割合の要件の緩和、③人材育成への協力体制の整備の3つの改正案が提案されました。
論点5 新しい総合事業サービスへの対応
平成27年4月から実施される新しい総合事業の導入により、多様な団体により多様な種類の介護予防支援サービスが、利用者に提供されることになります。そこで、介護予防サービス計画を作成するケアマネージャーは、多種多様になるサービスについて理解を深めていくことが要求されます。今回の議会では新しい総合事業サービスについて、①基本報酬を見直すこと、②ケアマネージャーは、居宅サービス計画に位置付けた指定居宅サービス等の担当者から個別サービス計画の提出を求めることが出来るようにする、ことが提案されました。
論点6 地域包括システム構築の推進
地域包括支援システムの構築のために、今回の議会では、「居宅介護支援事業者等が地域ケア会議から、個別のケアマネジメント事例の提供を求められた場合は、これに協力しなければならない」という基準を居宅介護支援事業者の運営基準に規定することが提案されました。
以上の6つの論点が、平成27年度介護報酬改定に向けて居宅介護関係等を議題とした議会の論点になります。